2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K00927
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
佐久間 理英 椙山女学園大学, 生活科学部, 講師 (10551749)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | リン / 血清リン濃度 / 食習慣 |
Outline of Annual Research Achievements |
高リン血症は動脈硬化の促進因子であり、心血管疾患など種々の疾患の発症リスクを増大させる。このことは、血清リン濃度が著しく上昇する慢性腎臓病患者において長年問題視されてきた。しかし近年、健常者において、たとえ正常範囲内であっても、血清リン濃度の上昇に伴い心血管疾患や死亡リスクが増大することが明らかとなり、血清リン濃度の管理が健康長寿を支える上で重要であると解明された。健常者における血清リン濃度の上昇は、食の欧米化、加工食品の摂取量増大、食事摂取リズムの乱れなど、近年に特徴的な食習慣の関与が示唆されるが、その関連性は明らかではない。そこで本研究は生体内リン代謝動態に及ぼす食習慣の関与を明らかにし、血清リン濃度の管理に適した食習慣を解明することを目的とした。 これまでの研究では、ラットにおいて脂質摂取割合と腸管リン吸収の関連性、ヒトにおいて血清リン濃度およびリン調節因子濃度と食品群別リン摂取量との関連性、および主食摂取頻度との関連性を解明した。そこで2020年度は、ヒトにおける血清リン濃度およびリン調節因子と血液生化学データ、栄養素摂取量、食品群別摂取量との関連性を評価した。その結果、血清リン濃度および血清iFGF23濃度は、血清総コレステロール濃度および血清LDLコレステロール濃度と有意な正の相関を示した。また、血清リン濃度は血清尿素窒素濃度と、血清iFGF23濃度は血清クレアチニン濃度と、それぞれ正の相関を示した。また血清リン濃度およびリン調節因子濃度を四分位で群分けし、食品群別摂取量との関連性を評価したところ、菓子類の摂取量について血清iFGF23濃度が高い群で摂取量が多く、血清リン濃度が高い群で摂取量が多い傾向がみられた。 また、これまでの研究成果である、主食の摂取頻度と血清リン濃度およびリン調節因子濃度の関連性についての英語論文を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2020年度の計画として、ヒト試験において対象者数を増やして血清リン濃度と食習慣との関連性を総合的に評価する予定であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により、人と人との接触を伴う試験の実施が困難であったため、既存のデータを用いての解析となった。また、新型コロナウイルスへの対応業務に多くの時間を費やしたことにより、詳細な解析にまで至らなかった。以上のことより、進捗状況を「遅れている」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も健常者を対象として、血清リン濃度およびリン代謝指標と食習慣の関連性を評価する。現在までに、ヒトにおける血清リン濃度およびリン調節因子濃度と食品群別リン摂取量、主食摂取頻度、各食品群の摂取量との関連性を評価した。しかし食事は複数の栄養素や食品を同時に摂取するため、単一の食品群の摂取量だけでなく食事全体の摂取パターンとリン代謝の関連性についても評価する必要がある。よって今後は、血清リン濃度およびリン代謝指標と食事パターンとの関連性について、重回帰分析や因子分析等の統計手法を用いて解析進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、当初予定していたヒト試験を実施できなかったため、次年度使用額が発生した。次年度は、血清リン濃度およびリン調節因子濃度と食事パターンとの関連性を総合的に解析するとともに、その成果を英語論文にまとめて発表する。そのため次年度使用額は、統計ソフト、英文校閲料、論文掲載料として使用する。
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Research Products
(1 results)