2018 Fiscal Year Research-status Report
シンバイオテイクスによる乾癬の予防・治療に関する研究
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17K00929
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
久保 薫 奈良県立医科大学, 医学部, 教育教授 (20254493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅田 秀夫 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60252681)
友田 恒一 川崎医科大学, 医学部, 教授 (90364059)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 乾癬 / シンバイオテイクス / 腸内細菌叢 / 喫煙 |
Outline of Annual Research Achievements |
乾癬の原因は未だ不明であるが、遺伝因子(自己免疫反応)を背景に、内的因子(主に肥満、糖尿病、高脂血症)と外的因子(主に喫煙)により、自己免疫反応から発症・悪化する難治性の慢性炎症性皮膚疾患であり、紅斑、痒み、リウマチ様関節炎などの症状は患者のQOLを著しく低下させる。外用療法、光線療法又は内服療法に加え生物学的製剤の使用が治療方針として推奨されている。一方、腸内細菌叢の制御により肥満、糖尿病の治療が進展しているが、腸内細菌叢を介した乾癬の予防と治療法の開発、更には喫煙を背景とした乾癬に関する研究は着手されていない。 平成29年度では、Wistar系ラットと喫煙に感受性が高く、免疫応答を介した関節炎を好発するLewis系ラットの背部皮膚ならびに耳介へのイミキモド軟膏の塗布による乾癬様皮膚炎において、背部皮膚の紅斑、肥厚と鱗屑のPsoriasis Area and Severity Indexによる評価では、Wistar系ラットよりもLewis系ラットで比較的強く発現することが認められた。更に、Lewis系ラットの乾癬様皮膚炎に対して、誘発8週間前よりAIN-93G(通常飼料)、セルロース欠乏AIN-93Gあるいはセルロース欠乏AIN-93Gにシンバイオテイクスを添加した飼料を不断給餌した結果、シンバイオテイクスの摂取により背部皮膚の紅斑、肥厚と鱗屑の程度と耳介の肥厚が軽減され、糞便中の酢酸濃度と酪酸濃度が有意に増加することが認められた。 平成30年度は、誘発後24時間以内の皮膚組織中のサイトカイン(TNF-αとIL-17)量ならびに好中球浸潤の指標として組織中MPO活性を測定し、Wistar系ラットよりもLewis系ラットでいずれもが高い傾向が認められた。また、Lewis系ラットへの4週間または8週間の喫煙曝露後の乾癬様皮膚炎が、8週間の喫煙曝露により増強される傾向が観察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請者がこれまで得たシンバイオテイクスの摂取によるLewis系ラットにおけるアジュバント関節炎の軽減効果に基づき、Lewis系ラットを用いた乾癬様皮膚炎モデルを作成するとともにシンバイオテイクスの効果を検討し、申請者が調整したシンバイオテイクス(グルタミン、ポリデキストロース、ラクチュロースとBifidobacterium lungumの混合物)の摂取が乾癬様皮膚炎を軽減することを見出した。また、シンバイオテイクスの摂取により腸内における短鎖脂肪酸(酢酸、酪酸)の産生が亢進されることから、腸内細菌叢の制御を介した乾癬の予防と治療の可能性を示唆するものと考えられた。加えて、誘発初期反応では、炎症性サイトカインの産生と好中球浸潤の関与が、その後の悪化につながる可能性が考えられた。また、喫煙曝露が実験的乾癬様皮膚炎を増悪する可能性が得られたことから、乾癬への喫煙の悪影響が考えられた。一方、炎症性細胞や免疫系細胞とサイトカイン等の動態、病理学的評価及び腸内細菌叢との関連に踏み込めておらず、研究計画は遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
喫煙を背景にした乾癬様皮膚炎と腸内環境の悪化との関連性を明らかにする目的で、喫煙に感受性が高く、免疫応答を介した関節炎を好発するLewis系ラットに8週間の喫煙曝露を行ったのち、乾癬様皮膚炎を誘発し、腸内環境の変化と全身性炎症との関連性の観点から、喫煙による乾癬の発症ならびに増悪等に関する機序を解明するとともにシンバイオテイクスの効果を検討する。
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Causes of Carryover |
本学では、動物実験施設における飼育費用(飼料代、床敷代等)は全学の飼育動物数等(施設消耗品を含む)を基に算出され、実費請求される。このため飼育動物数等の変動により請求額が若干変動する状況にある。 当該研究における動物実験を順調に遂行するために、飼育経費に使用する予定である。
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