2018 Fiscal Year Research-status Report
小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの原因遺伝子解析とそれに対応する小麦品種の探索
Project/Area Number |
17K00938
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
矢上 晶子 藤田医科大学, 医学部, 教授 (90367699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 政志 藤田医科大学, 医学部, 客員講師 (30449467)
野口 恵美子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40344882)
池田 達哉 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 上級研究員 (60355138)
下條 尚志 藤田医科大学, 医学部, 客員講師 (70410751)
松永 佳世子 藤田医科大学, 医学部, 教授 (80131192)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小麦依存性運動誘発アナフィラキシー / 発症予測マーカー / 小麦アレルゲン分子種 / 低アレルゲン小麦 |
Outline of Annual Research Achievements |
小麦依存性運動誘発アナフィラキシー(WDEIA)は小麦含有食品摂取後に運動等によりアナフィラキシーショックなど生命の危険にさらされることがあり、治癒が難しく、患者らは長期的に食生活に注意を払わなければならない。本研究では発症予測マーカーを探索し、患者らが摂取可能な小麦種を探索することを目的とする。申請者らは既に全ゲノム関連解析により世界初となる加水分解小麦アレルギー疾患感受性遺伝子の同定に成功しており、WDEIAについても同様に全ゲノム関連解析により疾患感受性遺伝子を同定することが可能と考える。疾患感受性遺伝子が同定された場合には、遺伝子型による発症リスク予測法の開発を行う。さらにHLAに特徴があった場合には、HLAと小麦遺伝子の結合性をコンピューターシュミレーションにより解析し、WDEIA患者でも摂取可能な(発症前であれば発症予防に繋がる)小麦品種の開発基盤を作る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)遺伝子型決定(SNP マイクロアレイ解析 )アフィメトリクス社のAxiom Precision Medicine Research Array を使用する。同意が得られた患者末梢血か らDNA を抽出し200ng のDNAを用いて増幅し、25~125 塩基対(bp)の断片にランダムに断片化を行いAxiom Precision Medicine Research Array にハイブリダイズさせる。アレイ表面で行われるマルチカラーのライゲーション反応後アレイを染色し、GeneTitan MC Instrumentにより画像を 取得する。取得された画像を用いてAxiom Analyisis Suite 2.0により遺伝子型を決定する。インピュテーション法による非タイピング遺伝子多型の遺伝子型推定各個人でタイピングされた80万SNPのジェノタイプデータを用いて網羅的なゲノム解析を実施する。インピュテーション実施時に得られるimputation score に基づきSNP のQC を実施。現在確定診断患者からのサンプルを集め、解析に向け進めている。 2)ウェスタンブロット解析によ る小麦アレルゲン分子種の同定と低アレルゲン小麦の選定 既存の各種小麦とWDEIA およびGP19S による小麦ア レルギー患者の血清を使用してウェスタンブロット法による反応性の差異を検討した。ωー5グリアジン、ω-1,2グリアジン、高分子量グルテニン、低分子量グルテニン、α/β/γーグリアジンの血清において 25名分のウエスタンブロット解析を行った結果、ω-5と必ずしも反応はしないが、低分子量グルテニンとは全ての患者が反応した。現在、様々な小麦サンプルに対してIgE抗体の反応を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)遺伝子型決定(SNP マイクロアレイ解析)と関連解析 2018年度に引き続き遺伝子型決定を行い、全てのサンプルについて2019年度内に遺伝子型決定を完了する。得られた遺伝子型情報を用いてPLINK(https://www.cog-genomics.org/plink2)によるGWAS を実施する。GWASで関連が認められたSNP については、独立した小麦アレルギーサンプルを使用して追認を行う。アレルギー疾患への強い関与が報告されている主要組織適合遺伝子複合体(MHC)内のHLA 遺伝子については、HLA imputation 法を用いたHLA 遺伝子アレルおよびアミノ酸多型の推定を行う。参照データとしてNBDC ヒトデータベースに登 録された日本人健常者908名のデータおよび申請者が独自に保有する471名のデータを用いることにより、主要 なクラスI HLA 遺伝子(HLA-A/B/C)、クラスII HLA 遺伝子(HLA-DRB1/DQA1/DQB1/DPA1/DPB1)の全てを対象としたHLA imputa tion 法の実施が可能になる。Imputation ソフトウェアとしてはSNP2HLA を使用する。強い関連が認められたHL Aアレルについては、実測によるHLA 遺伝子型解析を使用する。上記検討結果により、発症リスク予測マーカーを確定する。 2)低アレルゲン小麦の特徴の特定 ゲノム解析で疾患とHLA 領域との関連が同定された場合には、既に報告されているω-5 グリアジンのエピトープと、タンパク構造データベースに登録済のHLAの立体構造とのシュミレーションによる解析を行う。さらに、ウェスタンブロットで反応性の低かった小麦品種のω-5グリアジンのアミノ酸配列情報を比較し、シュミレーションの妥当性を検証する。その後、上記検討で見つかった個々のタンパク質についても、同様にシュミレーションし、どのタイプのWDEIA 患者が、どのタイプの小麦を摂取可能か特定する。最終的には、よりアレルゲン性が低い小麦品種の開発のため、アレルゲン変異を集積させた系統の開発に着手する。
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Causes of Carryover |
患者サンプルの収集が困難であった為、研究が遅れているが、今後しっかりと進めたい。
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