2017 Fiscal Year Research-status Report
微量元素の組み合わせ過剰摂取と高脂肪食が老人性神経障害に及ぼす影響
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17K00939
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
吉田 香 同志社女子大学, 生活科学部, 教授 (10336787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
魏 民 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (70336783)
北村 真理 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (40369666)
寺本 勲 (木俣勲) 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (20153174)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 微量元素 / 動物行動試験 / 過剰摂取 / 学習・記憶障害 / 老化 / 老人性脳神経障害 / マウス / モニタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
微量元素の過剰摂取により老人性神経障害が起こること、さらにその障害が高脂肪食や微量元素の組み合わせ摂取によって増強される可能性が指摘されているが、その詳細は不明である。先行研究で、加齢マウスへのZn、Mn、Cuの長期間投与により長期記憶の指標となる受動回避試験(PA)で記憶能の低下が起こること、また、Zn投与がPAと視覚的認知記憶の指標となる新奇物質探索試験(ORT)で用量依存的に記憶障害を引き起こすことを示した。今年度は、Znとの組み合わせ投与が学習・記憶能に与える影響を調べるため、加齢マウスにZn単独、ZnとMn、ZnとCuの組み合わせ飲水投与を30週間し、対照群との比較を種々の方法で行った。その結果、ORTでは、Zn単独投与で起こった記憶能の低下がMnとの組み合わせで認められず、対照群とほぼ同じであった。Cuとの組み合わせ投与では、Zn単独投与群と同程度の記憶能の低下を示した。文脈記憶の指標となる恐怖条件付け試験(FC)では、Zn単独投与とMnとの組み合わせ投与は変わらず、Cuとの組み合わせ投与ではZn単独投与に比べ記憶能の低下が若干認められた。行動実験終了後、海馬よりRNAを抽出し、マイクロアレイにより海馬における遺伝子発現に投与群間で差があったかを解析中である。 ヒトが摂取する食物中の微量元素量は種々の影響を受ける。今回、産地により含有量が異なることが示された。また、食物の体内での消化吸収率が異なるため、腸管からの微量元素の吸収率を抑制するとされているフィチン酸、促進するとされているヘム蛋白やカゼインホスホペプチド(CPP)がZn、Mg、Caの尿中排泄率に与える影響を調べた。その結果、フィチン酸は尿中排泄率を減少させ、ヘム蛋白やCPPは上昇させることが明らかになり、ヒト微量元素摂取量のモニタリング指標としての1日尿中排泄量の有効性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微量元素の組み合わせ投与による影響を調べるため、先行研究で加齢マウスへの長期間投与が学習・記憶能障害が起こすことが明らかになったZnを中心にMn及びCuとの組み合わせ投与が学習・記憶能に与える影響を調べた。その結果、新奇物質探索試験では、Cuとの組み合わせ投与で学習・記憶能の低下が促進されたが、Mnとの組み合わせ投与では逆にZn単独投与で観察された学習・記憶障害が起こらなかった。この原因解明のため、現在、マイクロアレイにより海馬における遺伝子発現に投与群間で差があったかを解析中である。さらに、現在、ZnとFeの組み合わせ投与の影響を調べるため、加齢マウスにZn単独投与、Fe単独投与、ZnとFeの組み合わせ長期間投与を行っている。30週間の投与期間終了後、行動試験によりFeとの組み合わせ投与が学習・記憶能に与える影響を調べる予定である。以上のように動物実験はおおむね順調に進んでいる。 ヒト微量元素摂取量のモニタリング指標の開発では、摂取量と1日尿中排泄量に相関が認められたZnとMg及び尿中排泄率が高いCaについて、ミネラルの腸管吸収を促進するとされている食品成分であるカゼインの消化物であるカゼインホスホペプチド(CPP)、ヘムを含む動物性たんぱく質及び阻害するとされている食品成分であるフィチン酸が尿中排泄率に与える影響を調べ、モニタリング指標としての尿中排泄量の有効性を検証した。その結果、フィチン酸は尿中排泄率を減少させ、ヘム蛋白やCPPは上昇させることが明らかになり、消化吸収率を加味したモニタリング指標としての1日尿中排泄量の有効である可能性が示されており、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在実施中のZn とFeの組み合わせ長期間投与が加齢マウスの認知機能低下に与える影響を調べる実験では、投与期間終了後、新奇物質探索試験および次年度購入予定のステップスルー装置により受動回避試験を行う予定である。行動試験終了後、脳組織について、HE染色および免疫組織化学染色によりタウ蛋白質のリン酸化、アミロイドβ蛋白(Aβ)の凝集等の脳神経の変性及び酸化ストレスを調べる。さらに、海馬よりRNAを抽出し、マイクロアレイにより海馬における遺伝子発現に投与群間で差があるかを調べる。 脳内に存在するメタロチオネイン(MT)、Aβ等のタンパク質が金属と結びついている量を測定することは脳内金属代謝を知る上で重要である。脳内の金属と結びついたタンパク質の定量方法の開発を行う。 Znとの組合せ投与により最も影響が認められたものについて、加齢マウスを高脂肪食群と普通食群に分け、高脂肪食下で30週間の組み合わせ投与を行い、学習・記憶能に与える影響を調べる。 ヒト微量元素摂取量のモニタリング調査の開発では、摂取食品群による尿中排泄量の影響をさらに細かく調べ、1日尿中排泄量のモニタリング指標として有効性を明らかにしていく。 共存成分によるZnの腸管吸収の違いを調べるため、in vitro でCaco-2細胞を用いて、Mn、Cu、Feなどの微量元素や食品成分の共存がZnの腸管吸収に与える影響を調べる。
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Causes of Carryover |
今年度新たな動物行動試験装置を購入予定であったが、実験途中で従来使用していたステップスルー型実験装置が故障したため、買い替える必要性が生じた。特別注文で作成してもらう必要があり、発注したが、年度末までに完成せず、4月納品となってしまった。納品後、次年度に支払う予定である。 また、海馬よりRNAを抽出して、現在、業者に委託し、マイクロアレイ解析により微量元素投与による海馬中の遺伝子発現の変動を調べてもらっている。解析終了後、次年度に分析料金を支払う予定である。以上の理由により次年度使用額が生じた。
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Research Products
(2 results)