2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K00940
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
高屋 淳二 関西医科大学, 医学部, 講師 (80247923)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小児貧困 / 小児肥満 / 痩せ / 生活習慣病 / アディポサイトカイン / インスリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
目的:大阪市の小学1年生、小学5年生と中学3年生の肥満とやせの分布を地域(区)別に比較検討する。 方法:対象は、大阪市教育委員会を通じ提供許可がえられた小学校106校と中学校42校の学童・生徒。平成27年度健康診断における体重と身長をもとに、生魚らが報告した計算式で肥満度を算出した。 結果: 1)高度肥満、中等度肥満、軽度肥満、痩せ(%)は各々、小学1年男(4,990人):0.30, 1,20, 2,48, 0,14。小学1年女(4,925人):0.26、1.20、3.07、0.10。小学5年男(4,761人):1.09、4.28、4.81、0.46。小学5年女(4,431人):0.70、3.54、4.45、1.06。中学3年男(3,726人):1.23、2.68、3.11、3.95。中学3年女(3,641人):0.69、1.95、2.91、3.05。2)男女とも小学5年生に中等度肥満と軽度肥満のピークを迎える。3)学年が上がるにつれて高度肥満とやせは増加し、中学3年では意外にも、男子のやせが女子を上まわる。 4)%肥満度(平均±SE)は、小学1年女子で6.34±1.17から-0.48±0.72、小学1年男子で4.22±0.85から-2.01±0.63と地域による偏りがみられた。5)小学校1年男子と全学年女子で、平均肥満度はその地域の平均年収と負の相関がみられた。[小学1年男子(r=-0.574、p=0.0033)、小学1年女子(r=-0.708、p=0.0001)、小学5年女子(r=-0.612、p=0.0015)、中学3年女子(r=-0.426、p=0.0381)]。 結語:大阪市内の学童・生徒の肥満度とやせの地域分布には、かなりの偏りがある。中学3年における、やせに男女とも注意が必要である。生活習慣病の予防には多元的な対策が望まれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大阪市在住約6万人の児童・生徒のデータとして体格(肥満度、BMIのZスコアー等)を居住地区の特殊性から統計的に解析し、これまでに、第65回近畿医師会連合学校医研究協議会総会(神戸)、第120回日本小児科学会学術集会(東京)、第5回食事運動生活習慣をよりよくする会集会(箕面市)、第48回全国学校保健・学校医大会(三重県津市)でいずれも口頭発表した。また英語論文にまとめ、日本小児科学会英文雑誌に投稿し、リバイス中である。また2018年5月にアメリカ小児科学会(トロント)にてポスター発表予定である。 また東大阪市教育委員会と協力し、子供の生活に関する現状把握をするために、小学5年生と中学2年生、16-17歳の子供、それぞれ1,000件、およびその保護者3,000件にアンケートを送付した。貧困の状況とともに、子供の将来の希望を中心にアンケー調査した。その結果を集計し、貧困度と肥満度についても検討中である。 当初予定した食事聞き取り調査とともに、食事内容をカメラ撮影で記録し、提出を求める、その写真をもとに栄養士とともに食事内容を評価し、確立されたスケールを用いてカルシウムやマグネシウム摂取量を計測する予定であった。しかしながら、写真を送付してもらうに際し、個人情報守秘の点などの諸事情により、未だ実施に至っていない。またアンケートに回答してくれるボランティアは確保できても、食事記録を細かく記載して提出を要請するのが困難であった。たとえ協力が得られたとしても、食事の記録と写真を検証する術がなく、正確な情報収集が困難である。 そのため、代替え策として病院受診された肥満児の保存血清のアデイポサイトカインを、ELISA法で測定し、肥満度の経時的変化と糖尿病の発症病態との関わりについて検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
学校医部会や学校養護教諭の勉強会に出席し、啓発の講演を行い、肥満や痩せを予防するための子供たちの成長と食育に関する啓発授業をさらに出張して行うことを計画する。その際にボランティアの児童・生徒を募って、在胎週などの分娩状況や出生時の体重や身長と経時的なデータを集積する。やせ児と肥満児を出生時の体格と家庭の社会経済状況から総合的に現在の体格の評価を行う。 地域基幹病院を受診した対象者には、上腕内皮細胞機能評価と血清の一酸化窒素代謝物質の測定を組み合わせて行う。内皮障害発症メカニズムを明らかにすることで、合併症の進展予防策を探求する。また、食欲・食行動と生化学的パラメータであるグレリン、レプチンとの相関を検討する。血清を凍結保存し、ELISA法によってグレリンやアディポサイトカインを測定する。 大阪府医師会学校医部会・生活習慣病対策委員会・委員長の立場から教育委員会と協力して、大都市児童・生徒の大規模なデータの統計的解析と科学的根拠に基づいた栄養環境の改善に取り組む。食事のアンバランスとくに、カルシウムやマグネシウムの不足が胎児発育抑制と同時に、成長後星人に至っての疾患の要因となることの解明に務める。 モデル校を選定し、同意の得られた児童・生徒を対象に、食事聞き取り調査と、啓発授業を行う前後での改善具合を評価する。食事の記録を写真撮影で評価する方法を当初計画したが、写真撮影する食事のみ「よく見せたい」というバイアスがかかる可能性が否定できないため、食事内容を正確に把握できる、さらなる方策を模索中である。 東大阪市で2017年に実施された小学生、中学生、青年への保護者を含めた貧困に対するアンケート調査結果をもとに、貧困家庭が切迫して抱える問題点を明らかにして、ホームページ上で報告する。
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Research Products
(9 results)