2020 Fiscal Year Research-status Report
高齢者のための匂い感強化色を用いた食事支援システムの提案
Project/Area Number |
17K00941
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
堀井 千夏 摂南大学, 経営学部, 教授 (00273863)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 食彩デザイン / 複合現実感 / 色彩情報処理 / 食事支援システム |
Outline of Annual Research Achievements |
食事は日常生活における重要な彩りとしての役割を持ち,生命活動を維持するために必要な栄養素を摂取するだけでなく,匂いや味,食感のような嗅覚や味覚による食の楽しみを得る.しかし,高齢者は加齢が進むに連れて嗅力や摂食能力が減退し,食事による感覚刺激を十分に得ることが難しくなる.本研究課題ではこうした高齢者が抱える問題を解決するために「食事の匂いを嗅く」といった摂食前の行動に焦点を当て,食事の匂い感を色彩で強調する.具体的には実空間と仮想空間を融合するARメガネと食事環境を効率よく取得する可動式カメラを用いて,高齢者の匂い感を仮想的に増幅し,摂食動機を効果的に向上する食事支援システムの構築を目指す.提案するシステムには加齢の症状とされる嗅覚の衰えを視覚的に補強し,食事における7種の味覚成分を連想する匂いの色分布,および,記憶から抱く匂いのイメージ色に基づいて,食事の匂い感を強化する色情報を推定していく.この推定色を高齢者の実食上で仮想的に高色再現することにより,摂食制限などから偏った食材選びや単調で薄い味付けになりがちな高齢者の食事に対する匂い感を強化し,食欲低下の傾向にある高齢者の食事に楽しみや満足感を提供することができる.この研究目的に対してこれまでに,高齢者の食事における匂い感の強化色を推定する上で必要となる高齢者の嗅覚機能の低下による色情報の影響を調査し,この調査結果に基いて高齢者が食事に対して抱くイメージ色の傾向分析を行った.また,高齢者の食事における匂い感と高齢者が食事に対して抱くイメージ色の関連性から,高齢者の視覚特性を考慮した複合現実感の環境を構築し、この環境を用いて実食事に提示するインタフェースを実装した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で一部の研究資材が調達困難となり,今年度に実施する計画であった食事支援の結果分析およびシステムの色再現性に関する評価についてやや遅れが生じているため.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究方策としては,これまでに構築した匂い感の強化色による食事支援システムに対して,今年度に実施した強化色を提示するインタフェースを適用し,このシステムの有効性を検証するための評価実験を行う予定である.
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で研究調査や研究発表が中止となり,また,一部の研究資材が調達困難となったため,旅費および物品費を予定通り執行できなかったことから,次年度への繰越金が生じた.今後の感染拡大による影響には不明な点は多いが,繰越金は次年度の本研究課題における研究活動費として使用する.
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