2018 Fiscal Year Research-status Report
ω-3系多価不飽和脂肪酸による心筋梗塞発症抑制戦略
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17K00948
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Research Institution | Seinan Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
田川 辰也 西南女学院大学, 保健福祉学部, 教授 (50347142)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近江 雅代 西南女学院大学, 保健福祉学部, 教授 (20301682)
手嶋 英津子 (相島) 西南女学院大学, 保健福祉学部, 講師 (60421327)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 動脈硬化予防 / 生活習慣病 / baPWV / ω-3系多価不飽和脂肪酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代日本の食生活は欧米化し、魚の摂取量が少なくなる一方で、動物性脂肪の摂取量が多くなっている。4割以上の人で脂肪エネルギー比率が25%を超え、30%を超えている人が2割以上もいる。この食生活状況が続けば、若年成人の段階で血管内皮機能障害が生じている可能性があり、将来の心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患の発症は増加し、発症年齢も低年齢化すると考えられる。このような動脈硬化の予防には、若年から高齢者にわたる栄養学的介入が必要と考えられ る。最近、ω-3系多価不飽和脂肪酸の食品の抗動脈硬化作用が注目されている。ω-3系多価不飽和脂肪酸にはエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、α-リノレン酸がある。EPA+DHAには簡単に入手可能なサプリメントがあり、α-リノレン酸は食用の亜麻仁油に多く含まれている。さらに、管理栄養士によるω-3系多価不飽和脂肪酸が多く含まれるメニュー(n-3リッチメニュー)の開発も有用と考えられる。しかしながら、EPA+DHAサプリメント、亜麻仁油、 n-3リッチメニューにより血管内皮機能改善されるかどうかは明らかではない。これらの摂取による身近な栄養学的介入により血管内皮機能が改善されることが証明されれば、動脈硬化が予防さらに心血管イベント(心筋梗塞)の発症率の低下が期待できる。ω-3系多価不飽和脂肪酸の栄養学的介入は薬剤に頼らないた め、医療費の削減にもつながる。 今年度は公開講座を開講し、その参加者の中から、40名の動脈波伝播速度(baPWV)を測定した。baPWVは収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧と有意な正の相関を示した。また、baPWVは糖尿病、高脂血症の有無で、有意な差は認めなかった。このことから、動脈硬化の危険因子の中で、高血圧が最も動脈硬化の進行に寄与すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の土台として、我々は公開講座を開催している。2016年度は参加者より200円、2017年度は300円を食事代として徴収しているにも関わらず、応募数および参加者数が減少することはなかった。さらに、20176年度までの申込数平均134名から2018年度は156名と、応募数は増加しており、本取り組みに対する地域住民の関心および満足度の高さが窺える。 4年間で計15回実施しているが、20178年度最終回参加者の約40%が6回以上の参加経験あり、リピーターが多いことが本取組の特徴と言える。参加者(地域住民)においては、講演の聴講に加え、講演に関連した食事の喫食やさまざまな体験型イベントへの参加し、自身の身体状況や生活習慣を顧みることにより、食生活や運動状況等の生活習慣改善への強い動機づけに繋がっていると考えられる。 本事業は、教員と学生の協働による、地域住民を対象とした健康と食に関する支援活動であるとともに、将来を担う専門的知識を有する人材の養成・育成を目的としている。そのため、本事業への学生(主として4年生)の積極的参加を促しており、学生は食育イベント(血圧測定、血管年齢測定(動脈波伝播速度(baPWV))、骨密度測定、展示等)および講演後の食事提供(献立作成、検収、大量調理等)を担当する。一連の食育推進活動を実体験することにより、両大 学の学生は、社会貢献の大切さを学び、専門職としての意識が向上すると考えられる。 本研究では、この公開講座の参加者を対象に動脈硬化の研究を進めている。今年度は40名のbaPWVの測定をした。昨年までに測定した参加者のあわせると140名以上でbaPWVを測定し、北九州市の地域住民の動脈硬化の程度が把握できた。また、動脈硬化の危険因子の中で、高血圧が最も動脈硬化の進行に寄与すると考えられた。 また、ω-3リッチメニューの開発も進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ω-3系多価不飽和脂肪酸の抗動脈硬化作用について、研究を進めていく。 ①EPA+DHAサプリメントの血管内皮機能改善効果に関する研究:20~70歳代の健康成人を対象に、EPA+DHAサプリメントを投与する前後で血管内皮機能と血管弾性baPWV、酸化ストレス度を測定する。すなわち、各年代の血管内皮機能障害の程度を調べるとともにEPA+DHAによる血管内皮機能改善効果、抗酸化作用について検討する。 ②α-リノレン酸の血管内皮機能改善効果に関する研究:20~70歳代の健康成人を対象に、亜麻仁油はω-3系多価不飽和脂肪酸であるα-リノレン酸を多く含む。この亜麻仁油に含まれるα-リノレン酸の継続的摂取による血管内皮機能改善効果を検討する。亜麻仁油を投与する前後で血管内皮機能と血管弾性baPWV、酸化ストレス度を測定する。 ③ω-3リッチメニューの開発およびn-3リッチメニューの血管内皮機能改善効果に関する研究:20~70歳代の健康成人を対象に、ω-3系多価不飽和脂肪酸を1800mg含む一品メニュー(ω-3リッチメニュー)を開発し、そのメニューを毎夕食に加えた食事の継続により、血管内皮機能が改善するかどうかを検討する。ω-3リッチメニューについては、すでに数種類開発済みである。さらにメニューの数を増やし、本研究に活用する。
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Causes of Carryover |
今年度は、研究がほぼ予定通りに進行したため、研究費もほほ申請額通りに、使用した。ただ、前年度からの繰越額があったため、その分が次年度に繰り越しとなった。次年度では、全ての研究費を使って、最終年度の仕上げの研究を実施する予定である。
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Research Products
(12 results)