2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K00963
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
下井倉 ともみ 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (30569760)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教員養成 / 小学校理科 / 理科教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、教員養成課程所属の教員志望の学生を対象に、彼らに理科の指導について自信をもたせるための指導法を開発する。過去の調査から、社会や国語など理科以外の科目を選修している小学校教員志望の学生(以後、非理科生)は、「理科を理解するための科学的に考える力が身についていない」、「小学校で理科の学習項目を教える自信をもてない」という問題を抱えていることが分かっている(下井倉ほか2017, 地学教育)。このことから、非理科生を対象にした理科の指導法の開発は喫緊の課題である。本研究では、小学校理科の学習項目の内容について、主に非理科生を対象に、彼らに科学現象の本質的な理解と科学的に考える力を身につけさせるための指導法を開発する。平成29年度は、以下の学習プログラムと教材の開発を行った。
(1)学習プログラムの開発:小学第4学年「自転」、「公転」、小学第5学年の「振り子の動き」を取り入れた「力とエネルギー」のテーマで学習プログラムを開発した。講義、実習・レポート、授業考案を取り入れた学習プログラムを開発した。 (2)非理科生を対象にした教材の開発:小・中学校理科での活用を念頭においた、銀河系の回転と地質年代を関連付けて学習することができる新しい地学教材を開発した。 (3)天体望遠鏡の適切な取り扱い方のまとめ:小学校理科の授業で天体望遠鏡を活用することを念頭に、天体望遠鏡の扱いに不慣れな初学者にありがちなトラブルの例を紹介し、その対策や留意点について論じた。 (4)理科生と非理科生を対象にした教材の開発:分子分光データ93GHz帯のN2H+分子輝線の学習教材を開発した。この分子輝線の一般的な解析には複雑なプログラムを作成する必要があり、プログラミングに不慣れな学部生が解析を行うことは容易ではない。そこで、本研究では、学部生でも簡単にこの分子輝線の解析法を学べる教材を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の(1)について、「力とエネルギー」をテーマにした学習プログラムを開発した。非理科生に「理科を理解するための科学的に考える力」を身につけさせるためには、原理の解説を行い、それを理解させることが重要である。そのため、学習プログラムの内容は「①知識の習得、②科学現象の原理の理解・科学的思考力の養成、③児童にどのように学ばせるかを自らで考える力の養成」の3段階で行った。「力とエネルギー」の学習プログラムは以下のように構成した。①エネルギーを理解するための講義(エネルギー保存の法則、運動量保存則、仕事、重力、周期、など)、②フーコー振子の観察及び実験、③小学第5学年 「振り子の運動」の指導案作成。 上記の(2)について、「太陽系の旅 -銀河系の回転と地質年代-」と名付けたこの教材は、NASAが作成した銀河系のイラスト上に、太陽系の公転軌道を時計代わりにして地質年代上の重要な古生物や出来事をプロットしたものであり、A1サイズのポスターとして小学校~高等学校の教室に掲示して活用することを想定している。 上記の(3)について、理科専攻の学生に対して行った天体望遠鏡の実習に関する教育実践を行った。天体望遠鏡の取り扱い方について、実習時に起きた様々なトラブルから留意点をまとめた。初心者にありがちなトラブルは、アダプター等のネジに関することと、対物レンズ等の取り扱いに関することに大別された。以上の結果とその対策について東京学芸大学紀要に報告した。 上記の(4)について、開発した本教材の有用性を確かめるために、東京学芸大学の学部3・4 年生に対し、本教材を用いた授業実践を行った。本教材を用いることで、学部生でも分子輝線の解析法を理解できることがわかった。本教材を効果的に利用する上での注意事項(ワークシートの取り扱い方、物理に慣れていない学生への指導法など)も、いくつか明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)学習プログラムの開発 平成30年度は、引き続き小学校理科で取り扱う学習項目を複数取り入れたテーマごとにプログラムを開発する。「熱と温度」、「天体の動き」をテーマにした学習プログラムを作成する。講義(①)・実習(②)・授業考案(③)による学習プログラムを構築する。1つのテーマの授業時数は2~3時限数程度とし、テーマごとに指導法と教材(実験・観察のための器具とワークシート)の開発を行う。
(2)学習プログラムを用いた授業の実践 教員免許法上の教科に関する科目(「初等理科教育法」等)の授業などを利用して、開発した学習プログラムを用いた教育実践を行う。
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Causes of Carryover |
地学教育学会への参加を予定していたが、成果発表のための準備が不十分であったため、参加を中止した。よってその分は次年度使用額とし、次年度の学会への参加(地学教育学会、または国際天文学会)、もしくは、成果発表のための論文投稿料として使用する。
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