2018 Fiscal Year Research-status Report
ナミアゲハ幼虫の持つ適応的なふるまいを発見・理解する探究教材の開発、実践
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17K00972
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Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
今井 健介 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (80447888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 忠幸 京都教育大学, 教育学部, 教授 (20314297)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 昆虫 / 表現型可塑性 / 適応 / 生活史 / 過剰脱皮 / 植食者 / アゲハチョウ / 生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、児童生徒に、生物の食うものと食われるものの関係において、食うものの示す適応を理解させることである。その題材として、ナミアゲハが寄主植物に対して示す適応を観察・理解させるための教材開発と実践を試みている。 本年度は、柔らかい幼葉を餌として育てられたナミアゲハの終令幼虫が、硬い成葉を利用する能力が低く、一方、硬い成葉で育てられたナミアゲハの終令幼虫は、成葉を利用できることを明らかにし、日本環境動物昆虫学会、日本応用動物昆虫学会で発表した。 また、この現象が、幼虫の終令までの脱皮回数が一度増える「過剰脱皮現象」によって引き起こされることも示した。すなわち、硬い葉で育った幼虫は、成長が遅く、体や大顎のサイズも小さいが、過剰脱皮することで幼虫期間を延ばし、大きな大顎を作ることで成葉を食べることが可能となったことが明らかになった。 本研究の成果は、ナミアゲハ幼虫が、自らの餌条件(柔らかい葉が利用できるような条件(寄主植物種、季節、競争者の存在下)に生まれたか)に応じて、生活史戦略を可塑的かつ適応的に変化させていることを示唆している。 今後、この現象についてのさらに厳密な検証を行うとともに、児童・生徒にこの現象を再発見させるための教案作り、学校教員が教材を扱うための補助教材作りを進める。教材では、植物の硬さが植食者に対する防御として働いていること、植食者が寄主植物の防御に対抗できるような適応を持っていること、植食者が自己の存在する環境に反応して、生活史戦術を選択することを、児童生徒が自ら考察し、生物学、特に進化生態学への興味を喚起することを目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書で(A)基礎的研究段階として示した①~③のうち、①と②については上記のように十分な成果を得た。③として示した、「幼虫の植物上での行動を定量的に解明する」については、昨年度と本年度に実施する予定であったが、柑橘の植樹スケジュールが遅れたこともあり、本年度のみの取り組みとなった。 計画書で(B)応用的研究段階として示した内容について、大学生を対象としたナミアゲハ幼虫の形態観察授業、吐糸行動の観察実習をおこなって、準備を進めた。また、灰色型蛹と緑色型蛹をフォトグラメトリー技術を用いて3Dモデル化し、時期を問わずその形態観察と比較をできる教材を開発し、公開準備を進めている。(A)で得た成果については、本年、大学院生を対象とした授業実践を行い、その成果を公表するとともに、試作教材の公開を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
・教員養成課程の大学生参加の下、ナミアゲハ幼虫の植物体上の行動観察を行って、教材となる可能性のあるナミアゲハの適応の発見・再発見を行う。植物としては育成の容易なヘンルーダを用いる。 ・ナミアゲハの過剰脱皮現象の解明と教材化を進める。大学生に向けた教育実践を通じて、教材を評価・改良する。また、教員向けの補助教材を発信し、普及に努める。 ・そのほか、3Dモデルやスローモーション動画などナミアゲハの形態・行動のICTコンテンツを充実させ、視覚的にわかりやすい教師向け副教材を作成し、発信する。 ・過剰脱皮現象の基礎研究成果、教材開発など応用研究の成果についての学会発表と論文化を行う。
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Causes of Carryover |
物品調達の際の見積額の変化によるもの。差額は翌年度飼育実験の規模を若干拡大するための、資材調達に用いる。
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Remarks |
上記WEBページを新設したことに加え、カラーパンフレット「MIRU - 観る」を2019年に作成し、その紙面上で教材開発の取り組みを紹介した。パンフレットは生物系の小・中・高校教員および教員養成系大学教員に配布した。
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Research Products
(5 results)