2017 Fiscal Year Research-status Report
小・中学校の地層学習の科学理論的省察と地層形成実験・授業の開発に関する研究
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17K00973
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
廣木 義久 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (80273746)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地層の学習 / 地層形成実験 / 小学校 / 中学校 / 理科 |
Outline of Annual Research Achievements |
小学校第5・6学年理科および中学校理科第2分野の大手5社(東京書籍・啓林館・学校図書・大日本図書・教育出版)の教科書における地層形成に関する記述について,扱われている地層の種類と地層を形成させる流れの種類を調査した.また,教科書で扱われている地層形成実験がどのような地層形成理論に基づいているのかを明らかにした.小学校第5学年では,単元「流れる水のはたらき」の中で,河川流のような通常流のもとで,砂礫が流水による引きずりにより侵食・運搬・堆積する現象を扱っていた.小学校第6学年では,単元「大地のつくり」の中で,地層が礫・砂・泥・火山灰からなることが扱われていたが,地層を形成させる流れの種類については具体的な記述はなかった.ただし,教科書に掲載されている図より,礫・砂・泥の運搬・堆積に関して,海岸・沿岸域における通常流による運搬・堆積を扱っていることが示唆された.また,火山灰については火山噴火による堆積が扱われていた.中学校理科で扱われている地層は小学校と同様,礫・砂・泥・火山灰からなる地層であった.中学校において扱われている地層を形成させる流れの種類については,小学校と同様,海岸・沿岸域における通常流による堆積(礫・砂・泥)と火山噴火にともなう堆積(火山灰)が扱われていた.小学校第6学年で行われている地層形成実験は,ペットボトルに砂・泥を入れてよく振り,それを静置してつくる実験,および,樋に置いた土砂を水流で流し,水を張った水槽へ流し込む実験が主流であった.いずれの実験も堆積物重力流による堆積現象を模した実験であった.中学校の教科書においては,地層形成実験はいずれの教科書にも掲載がなかった.また,解放型直線水路を用いて通常流下での地層形成実験を予察的に試みたが,流速を変化させる中で,先に堆積した地層が侵食されてしまうため,成層した地層を形成させることができなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究実施計画では,(1)教科書における地層形成に関する記述と地層形成実験の理論的検証,ならびに,(2)市販の堆積実験装置を使った地層形成実験の検証,の2つを計画していた.(1)については,小学校および中学校の大手5社の教科書の調査から,小学校および中学校において扱っている地層の種類(礫・砂・泥・火山灰からなる地層)とそれらの地層を形成させる流れの種類(通常流)を明らかにすることができた.また,小学校において扱われている地層形成実験はいずれも通常流ではなく,堆積物重力流による地層形成実験であることを明らかにすることができた.また,(2)については,解放型直線水路を用いて通常流下での地層形成実験を予察的に試み,通常流下で地層を形成させることが難しいことがわかった.以上のように,今年度は,ほぼ当初の実施計画通り研究を遂行することができたことから,現在までの進捗状況を「おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は,ほぼ当初の実施計画通り研究を実施することができたことから,平成30年度は,申請の実施計画通り,小・中学校理科での地層学習にふさわしい地層形成実験の開発を行う.平成29年度の調査研究から,小・中学校理科で扱われている地層の種類と流れの種類を明らかにすることができた.また,教科書で扱われている地層形成実験がどのような地層形成理論に基づいているのかを明らかにすることができた.小学校,中学校のいずれにおいても,礫・砂・泥からなる地層については,通常流によって形成された地層を扱っていたが,教科書に掲載されている地層形成実験は通常流ではなく,堆積物重力流による地層形成実験であった.つまり,教科書で扱われている地層および地層を形成させる流れと教科書で扱われている地層形成実験には齟齬が生じていることが明らかとなった.そこで,小・中学校理科での学習にふさわしい通常流による地層形成実験の開発が必要であり,次年度はその開発を進める.
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Causes of Carryover |
当初の使用計画では,旅費に300,000円を計上していた,その内容は,学会参加旅費200,000円と砂泥採取旅費100,000円であったが,実際の支出は87,160円であった.参加した学会の開催地が松山市と神戸市と大阪に近かったため,支出を抑えられたことが次年度使用額が生じた主な理由である.生じた次年度使用額は,次年度の地層形成実験の開発のための材料費および試料採取旅費等に使用する予定である.
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