2018 Fiscal Year Research-status Report
算数と数学を一貫させる教師の指導知と単元構成の理論の実践的開発研究
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17K00974
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岡崎 正和 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (40303193)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 科学教育 / 算数と数学の接続 / 教師の指導知 / 単元構成 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的は,算数と中学数学を一貫性のあるものとして捉え,授業実践を可能にする為の教師の数学的指導知の問題と,個々の授業だけでなく単元を一貫させて展開できる指導・カリキュラム・マネジメントの問題を総合的に捉えて,小中学校の教師と協働で,算数と数学を接続する単元構成の理論を開発することである。 2018年度は,まず日本の算数・数学授業の質を分析する為に,物語的一貫性に着目し,その視点から授業の質を捉える理論的枠組みを提起した。また,実践的には,算数を専門とするベテラン教師,算数を専門としないベテラン教師,若手教師の授業を比較検討して,何に違いが生じているかを質的研究によって明らかにした。成果は,第8回東アジア数学教育国際会議論文集および招待講演にて発表した。 第二に,文化心理学の立場から,教室文化と算数・数学授業との関連を吟味し,授業を分析する上での基本的な視点を導出するとともに,「問い」を軸とした数学授業と呼ばれる授業実践を分析し,それらの関連性を吟味した。成果は,Hiroshima Journal of Mathematics Education誌にて発表した。 第三に,わり算概念に焦点を当てて,調査によって判明したわり算理解の困難性を克服するための実験授業を実施・分析し,わり算の指導に関する指導の原理を明らかにした。成果は,環太平洋大学紀要に掲載された。 第四に,中学校3年の証明指導に焦点を当てて,証明言語の生成と振り返りを通して,証明理解のレベルを高めるための要件について検討を行った。成果は,日本数学教育学会第51回秋期研究大会にて発表を行った。また,実証的な研究にも着手し,授業データの収集を行った。 最後に,中学校での空間図形の学習の充実を目指して,生徒が直観的な思考のみならず,論理的な思考を高める為の授業づくりを計画,実施し,データ収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30 年度は,小中学校での単元開発および授業分析を行うとともに,単元構成と指導知の分析研究を並行して行うこととしていた。特に,小中学校での実験授業について,児童・生徒の学習過程の特徴を質的に分析し,算数を数学に接続する為の単元構成の方法や,数学的指導知の発達と継承過程を明らかにすることを目指していた。この点から,小学校と中学校のいくつかの単元での授業を実施・分析し,算数・数学授業の物語的な一貫性の生成という視点から教師の指導知を吟味する理論的枠組みを発展させることができたことから,当初の予定委通り進展していると考える。 また,実践的には,小学校で図形の包摂関係・定義に関する単元,中学校で図形の証明に関する単元を,教師達と構想し,授業実践し,データ収集を行うことを目的としていた。これに関して,小学校でのデータ収集ができなかったものの,中学校では,平面図形のみならず空間図形に関しても,授業実践とそのデータ収集が実現したことから,予定通り進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,中学校で実施した授業の分析を行うとともに,算数を数学に接続する単元構成と指導知の理論および数学的指導知のコンテンツを定式化していく。 まず,平成30年度に収集した空間図形の授業データの分析を進めつつ,他の中学校でも授業を実施し,比較検討を通した質的分析を行い,生徒の学習過程の特徴を明らかにする。成果は国内の学会で発表する予定である。 次に,算数を数学に接続する単元構成と指導知の理論と実践知のコンテンツを開発する。これまでの実証的データの分析をもとにして,物語的一貫性の視点から理論的枠組みを整理するとともに,算数を数学に接続する理論を定式化していく。また,実践的に明らかにしたことを,地域の教師達を交えて,授業づくりや単元構成の理論とともに,普段の授業で使える形にして,学校現場に還元していきたい。これらの成果は学会で発表すると共に,報告書類の中にまとめていく。
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Causes of Carryover |
平成30年度に計画していた実験授業の内の一つが実施できなかったため,その成果を発表する為の予算(旅費)を含めて,執行していない。平成31年度に,新たに実験授業を実施する予定であるので,その分析と成果発表を行う為に使用することとする。
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Research Products
(11 results)