2018 Fiscal Year Research-status Report
非物理系の大学初年次物理学教育における系統的演示実験・講義の展開
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17K00988
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
古澤 彰浩 藤田医科大学, 医学部, 准教授 (20362212)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 淳一郎 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 准教授 (00402446)
小西 哲郎 中部大学, 工学部, 教授 (30211238)
千代 勝実 山形大学, 学士課程基盤教育機構, 教授 (80324391)
齋藤 芳子 名古屋大学, 高等教育研究センター, 助教 (90344077)
伊東 正人 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (90378232)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 系統的講義実験 / 高等教育 / 物理学初年次教育 / 教材開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
初学者にとって知識や理解が断片的なものとなりがちな物理概念・法則相互の関係を、論理的なつながりを持った体系として定着させるには、講義による解説を含めて実験を有機的につなげていくことが有効である。そこで、講義による説明などの論理的展開と同時に実験・デモンストレーションを実施することによって体系的な理解に導く教授法の開発を目指し、そのための系統的実験教材の開発を目的としている。 まず、教材・教授法開発において対象となる受講者の傾向を評価するため、簡易的な力学概念調査を行った。調査は物理学を履修する一年生38名(高校で物理基礎のみ、もしくは未履修)を対象とし、日常の現象に関連する力学について物理法則、物理的概念の知識と理解を問う問題を作成し、実施した。回答は選択式、一部については選択理由を記述させ、誤答に至る理由についても調査した。この調査より、速度と加速度や力と運動量といった物理概念とその相互関係について誤概念や理解の曖昧さが明らかとなり、さらに後の調査からこの曖昧さが剛体運動の学習の際にも強く残り、質点運動と剛体運動が無関係で断片的にしか捉えられていないことを明らかにした。この結果を物理学会 2018年秋季年会物理教育分科会において報告した。 次に、質点の運動と関連付けながら剛体の回転運動の学習へつなげる演示を可能とする教材を設計し、試作した。この教材は回転するアームとそれにそって移動可能なおもりからなり、無拘束の場合とおもりの位置を固定するなどの拘束条件を加えた場合の運動の違いを見せることが可能である。この試作教材を用い、剛体の回転運動の法則を並進運動の法則と関連づけながら説明するデモンストレーションの動画を作成した。 この教材とデモンストレーションを物理学会第74回年次大会物理教育分科会において紹介し、意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度ならびに本年度に行った学生へのインタビュー調査や簡易概念調査の結果を踏まえ、「剛体・慣性モーメント・力のモーメント・回転運動」を学習する上で既に習得していることが前提となる物理概念、法則の理解が不十分である学生を想定し、前提となる「質点の力学」の理解を再確認・深化させるための実験・デモンストレーションを行う教材の追加を検討した。本課題の「物理概念・法則相互の関係を、論理的なつながりを持った体系として理解させる」という目的により、「質点の力学」と「剛体・慣性モーメント・力のモーメント・回転運動」の相互の関係を有機的につなぎ、受講者にとって体系的に捉えやすくするため、共通の教材を用いた一連の実験・デモとすることが効果的であろうという考えから、概念設計、機能設計の再検討を行った。この再検討、設計、試作、改良のサイクルに時間がかかり、試作が年度後期にずれ込んだことにより、年度中に講義において試用するという予定から少々の遅れが生じている。 令和1年度前期の講義において試用し、機材の改良や講義のフローとステップの構築と最適化について検討を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の「慣性モーメント・力のモーメント・回転運動」教材開発に続き、教材を用いた講義の試行を実施するとともに、機材の改良や講義のフローとステップの構築と最適化について検討を行う。同時に、最適化の過程において生じる異なるフロー、説明等の活用や、ステップに分解して再構築することによってバリエーションの開発を行う。 また、「波動」の系統的教材化の検討を行う。 波動とはどのようなものであるから始まり、波動の表し方から反射・透過などの基礎的な波動現象やドップラー効果へ繋がるまでの一連の教材を必要な実験教材を含めて検討し、開発する。 また、研究分担者、連携研究者の所属学部、担当講義、受講学生を想定したカスタマイズについて検討し、構成例を作成する。また、これらの教材を一般へ提供可能な形として、説明用教材、実験機材の構造・製作法解説、実施例の動画などを整理・作成し、公開する。本課題の先行研究において、教材とその利用例をまとめた「ハンドブック」の作成・配布、 ウェブサイトを介した演示実験の詳細や動画等の公開を実施している。本課題の成果についてもこれらを活用し、ハンドブックへの掲載・配布、ウェブサイトを通じた公開を行う予定である。
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Causes of Carryover |
「剛体・慣性モーメント・力のモーメント・回転運動」教材の開発においてアンケートや概念調査の結果を受け、まずは定性的な理解へ学生を導くことを目標とすることとした。それに伴い、当初予定していた定量化のステップを考慮した計測機器や駆動機構は組み込まず、機械構造や摺動部の検討を優先して設計、製作を行ったため、計測機器の購入費および部品製作費等が予定よりも少なく、次年度使用額が生じている。 平成31年度において試用を通して行う改良に加え、定量性を持たせるオプションについても検討、追加を行なう予定である。
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Research Products
(3 results)