2017 Fiscal Year Research-status Report
ビッグサイエンスの地域社会コミュニケーションの設計
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17K01020
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 広美 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (50401708)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大型科学 / 合意形成 / 基礎科学への投資判断 / 過剰広報 |
Outline of Annual Research Achievements |
参考となる成功した大型施設と地域の信頼関係の近年の研究には、たとえばクイーンズランド大学のWill Rifkin教授のグループによるガス田開発における信頼構築のコミュニケーション研究があることがわかった(Mercer-Mapstone,2018)。科学コミュニケーション研究ではよく知られる信頼の醸成のための研究である。事例に丁寧に寄り添って構築された研究プロジェクトであり、本研究に大変参考になった。ただし理論的成熟度が高く、同様のことを他のプロジェクトに当てはめても新規性に欠けると理解した。 提案時の3つのプロジェクトはそれぞれに動きがあり、特に国際リニアコライダー計画(ILC)については、LHCのこれまでの結果から、新粒子の発見は困難であることがわかり、500GeVというエネルギーをヒッグス粒子を大量に生成する半分の250GeVに修正した案が提示され、以前よりも現実味が増して報道にもたびたび取り上げられている。 他の2つのプロジェクトのうち、すでに地域との衝突があったTMTプロジェクトは刻刻と状況が変化しており、裁判等の可能性も残っており予断を許さない状況である。またスーパーカミオカンデや核融合研は地域コミュニケーションについての課題は報道レベルでは出ていない。 こうした状況の中、本研究は日本に誘致するのか否かの報道でたびたび取り上げられ社会の注目度が高く、課題が顕在化していない、ただし予算の額がこれまでに経験のない大型科学のプロジェクトであるILCに注目し、大型施設誘致における科学者と国民のギャップ(perception gap)に注視することで、Rifkin教授のグループのモデルの先を行く、理論的枠組みを目指す研究に的をしぼってい苦のが妥当であると判断した。これにより政策的にもニーズの高い成果を上げることを目標にする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際会議でRifkin教授の洗練された研究手法を学んだことは大きな成果だった。まだ、この1年の研究活動で、SNSの影響に関する成果が政治学分野から出ていることがわかり、こうした最新の他分野での研究進展に注意をした調査設計が必要であることがわかった。 当初は日本のプロジェクトに目を向けたインタビューを検討していたが、新しい理論的枠組みの開拓のためには、SNSにも注意を払い、研究設計を行うことが妥当であると考えた。 また、こうした成果を政策に反映することが可能な形での提案を行うことが必要であると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
ILCに焦点を絞り、2年度目については以下のように研究を推進する。 ・地域の誘致盛り上がりを確認するために現地調査を行う ・2015年に行った認知度、投資限界についての比較調査を検討する ・誘致における基礎科学への投資限界を見極める
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Causes of Carryover |
余裕を持って使用したため。
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Remarks |
Researchmapに順次掲載。
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Research Products
(1 results)