2018 Fiscal Year Research-status Report
誤概念を保有する教員養成系大学生と共にデザインする電気学習に関する理科授業
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17K01021
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
平島 由美子 横浜国立大学, 教育学部, 教授 (60242377)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電気学習 / 素朴概念 / 教員養成 / 理科授業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、学習者に強固に残る電流や電圧等に関する誤概念を調査して学習者がつまずく箇所とその理由を探り、その結果を活用しながら、誤概念を保有する教員養成系学部生と共に学習者の電流や電圧概念の理解を促す教材を開発し指導方略を検討する。研究を進めるために、(1)小中高の電磁気単元学習内容のつながりの把握、(2)電気回路における学習者の素朴概念に関する先行研究の把握、(3)電気回路における学習者の素朴概念調査の実施、(4)学習者の特性に関する調査の実施、(5)小中高の教科書掲載の代表的な実験および教材の把握、(6)学習者の電流電圧概念の理解を促す教材開発および指導方略の検討、(7)各学校種での授業実践と分析評価を行う。 初年度である平成29年度は、(1)、(2)、(3)、および(4)の予備調査をした。(3)は、電気回路に関して学習者に強固に残る誤概念は何かを把握するために、電池の直列つなぎ・並列つなぎ、単純回路・直列回路・並列回路の電流・電圧・抵抗、オームの法則に関して学習者の素朴概念の詳細を調査した(教員養成系学部生113名、理系学部生70名、文系学部生32名、高校生290名、中学生170名、小学生85名)。単純集計結果から、小学生では様々な素朴概念が存在するが、学校種が上がるにつれてその種類が減少するものの大学生になっても強固に残る誤概念が複数存在することが分かった。また、(4)の予備調査(教員養成系学部生97名)結果を踏まえ、学習者の特性に関する質問項目を決定した。 平成30年度は、教員養成系学部生252名を対象に(3)と(4)の本調査をし、加えて(5)を行った。結果、電流・電圧に関する理解度は、高校での物理履修状況と受験状況に依存し、学習観(特に「失敗に対する柔軟性」)とメタ認知に関連することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、教員養成系学部生252名を対象として電気回路に関する素朴概念の質問紙調査(21問)および学習者の特性に関する調査(学習観24項目、学習方略8項目、メタ認知10項目、電気学習の学習方略8項目、電気学習のメタ認知10項目)を実施した。電気回路に関する問題の理解度(得点率)は、11.7問正解(55.7%)であった。また、高校での物理履修状況および受験状況別での平均点と得点率は、未履修・未受験(9.4問正解、44.8%)、物理基礎履修・未受験(12問正解、57.1%)、物理基礎履修・センター試験受験(9.7問正解、46.2%)、物理基礎&物理履修・センター試験受験(12.7問正解、60.5%)、物理基礎&物理履修・2次試験受験(14.7問正解、70.0%)となり、電流・電圧に関する理解度は高校での物理履修状況と受験状況に依存した。また、学習者の特性に関する調査結果より、電気回路に関する理解度は、学習観、学習方略およびメタ認知と関連することがわかった。特に、学習観の「失敗に対する柔軟性」「思考過程の重視」、学習方略の「意味理解志向」が高い学習者ほど電気回路に関する理解度が高いことが示唆された。 また、小中高の電磁気単元の学習内容のつながりを理解し指導上の留意点等を把握するために教科書掲載の代表的な実験やものづくりを調べ、実際に器具類を購入して試した。 電気回路に関する素朴概念調査結果(H21~H30年実施、教員養成系学部生1354名対象)は、日本物理学会において発表した。“豆電球や電熱線等の負荷では電流が消費される”、“乾電池を負荷につなぐと乾電池からいつでも同じ量の電流が流れ出す”という考えは強固に残り、大学生になっても科学概念に転換していない状況があること、また、電圧(電位差)を理解していない、電源電圧がどこにかかるのかを考えない学生が多いこと等を報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、平成29、30年度の電気回路に関する理解度と素朴概念および学習者の特性に関する調査結果の分析を進める。加えて、誤概念を持ち電気学習に苦手意識を持っている教員養成学部生にインタビュー調査を行う。 また、引き続き、小中高の電磁気単元の学習内容のつながりを理解し指導上の留意点等を把握する目的で、教科書掲載の代表的な実験やものづくりを実際に試す。この際、海外の教科書も参考にしていきたい。 加えて、児童生徒の理科嫌いの一因となる電気学習の授業改善に向けた具体的な方略や学習者の理解を促す教材や実験を教員養成系学部生と検討し、授業実践を目指したい。
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Causes of Carryover |
平成30年度のうちに、必要となる実験装置、器具類、ものづくりの材料を購入し、小中高の教科書に載っている電磁気分野の代表的な実験や各単元学習で活用できるものづくりと定性実験を実施する予定であったが、一部の実験装置や器具類の購入ができなかった。平成31年度、引き続き、必要な装置や器具類等を購入して実施したい。また、この際、海外の教科書も参考にしたいと考え、購入を検討したい。
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