2018 Fiscal Year Research-status Report
科学筆記が呈する明治期教育改革の国際的関連 -科学と科学教育の関係性に着目して
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17K01022
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
興治 文子 東京理科大学, 教育支援機構, 准教授 (60409050)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 昭三 新潟大学, 人文社会科学系, 名誉教授 (10018822)
種村 雅子 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (30263354)
土佐 幸子 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40720959)
岡野 勉 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (30233357)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 物理筆記 / 櫻井房記 / 第五高等中学校 / 東京物理学講習所 / 水準器 / 東京大学理学部仏語物理学科 / 東京理科大学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、日本初の理学士の1人である櫻井房記が、明治23年に熊本の第五高等中学校で教えた物理筆記を発見した。櫻井は明治11年に東京大学理学部仏語物理学科を卒業し、明治14年に高等師範学校教諭、明治15年にイギリス、フランスへ留学したのち、明治23年から同行で教授兼教頭として勤務した。櫻井は、当時の最高峰の科学教育を受け、海外の最先端の研究教育環境を経験した人物である。本研究の大きな目的の1つである、最先端の科学の研究成果の科学教育への反映および、日本と諸外国の科学教育の国際的関連について考究するにあたり、願ってもない貴重な資料を発見することができたといえる。 また、櫻井は現在の東京理科大学が明治14年に東京物理学講習所として設立したときのメンバーの1人であり、設立にあたっては、東京大学から実験装置を借りて授業を行っていたとの記録もあった。実際、東京理科大学には「東京開成学校製作所造品」と記された水準器が保管されており、明治7年から10年の間に高等教育で用いる国産の科学教育のための実験装置が製造されていたということも明らかになった。水準器は、水の性質を利用して土地の高低を測定する機器として、櫻井が明治23年に教えた物理の授業筆記にも図入りで記載されている。明治10年代後半には、実験を通して科学を教えることが普及されつつあるが、日本の科学教育のかなり初期においても、実験を通して科学を教えていたことが記録として残されていたことは特筆すべきことである。 このような事実を国内外の学会に於いて発表を行った。2019年度には、一端の総括として学会に於いてシンポジウムを開催し、広く周知する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
明治20年頃の高等師範学校生徒の授業筆記に加え、当時の最先端の科学研究、教育環境にいた人物が教えた物理の授業の内容が記された筆記データを入手することができたため、本研究課題の目的を達成する見込みができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
櫻井の略歴を基に、東京開成学校、東京大学理学部仏語学科、東京師範学校での科学教育の内容と、明治15年にイギリス、フランスのどこに留学したのかなどの詳細について調査を行う。 また、定性的な科学の原理・原則に理解から、数式を用いた定量的な理解を求める教育がどの程度進んでいたのかについても検討を進める。 さらに、東京物理学講習所においては、開所時にどのような実験装置を東京大学から借りていたのかについて、調査を行う。 最終的に、このような高等教育機関における最先端の科学教育は、当時の一般市民への科学教育普及の観点に於いてどのようなことをもたらしたのか、包括的に研究をすすめる。
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Research Products
(10 results)