2019 Fiscal Year Research-status Report
看護リテラシー教育としての看護過程を活性化するIBL教育プログラム開発
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17K01040
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Research Institution | Baika Women's University |
Principal Investigator |
青山 美智代 梅花女子大学, 看護保健学部, 准教授 (80264828)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西薗 貞子 梅花女子大学, 看護保健学部, 准教授 (50458014)
勝井 伸子 奈良県立医科大学, 医学部, 非常勤講師 (90290436)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 看護過程 / 看護アセスメント / 看護理論用語 / インタビュー / 看護の世俗化 / 看護の職業化 |
Outline of Annual Research Achievements |
看護過程の授業内容には看護診断が深く関係するため、看護診断学会で看護基礎教育での看護診断教授法、中範囲理論との関連からの問題点、診断に至る前の思考の重要性、および臨床現場においては、効率のよい看護計画立案を促すシステムとしての看護診断が電子カルテシステムに組み込まれている現状、研究者の視点からは日本におけるNANDA-Iとの文化的差異に基づく新しい看護診断ラベル開発の必要性について情報を収集した。 2018年度の看護過程授業調査のうち、科目名、年次、単位時間数の分析に引き続き、2019年度は、授業内容を知るため、目的、目標、テーマ、ねらいなどの項目ごとの記述内容を整理し、テキストマイニングによる分析に適するデータとなるように、単文(主語+述語)単位に整理した。ただし、1コマのみの実施、主要テーマを看護技術としている科目、項目の記述がないものはデータに含めなかった。項目名は84項目と多岐にわたったので、類似性に沿って再分類し6項目に整理した。 米国看護理論の生成に影響を与えた医療事情、女性の社会化に関して、さらに深く研究するため、修道院と看護のかかわり、愛徳姉妹会などのフランスの看護修道女の活動、病院が修道院から分離独立していった歴史的経過、フランス第三共和政治における看護の世俗化と職業化のプロセスなどについて、国会図書館などにおいて文献収集、文献検討を行った。 看護理論の理解、活用実態を調査するために、前年度作成した米国看護理論周辺用語リストをもとに、前年度に引き続き、臨床看護師数名に個人インタビューを実施し、逐語録を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
看護診断学会では、学生自身が看護診断に到達する判断過程を簡潔に言語化する重要性、中範囲理論の学修時間の確保の必要性、看護診断のマスターにはラダーⅡ、Ⅲレベル(4年)を要する、という見解から、看護基礎教育での看護診断教育の難しさが強調された。しかし、効率化を目指す臨床現場が電子カルテシステムとの関連から看護診断を必須とみる視点もあり、看護基礎教育で看護診断を除外するわけにはいかないという状況が明らかであり、同時に現行のNANDA-Iを日本に適合したラベルに新たな開発が求められ、習熟と開発という大きな問題が提起されていることがわかった。 2018年時点における全看護系大学277校のうちシラバスをWEB公開している255大学について、1コマのみ、テーマを看護技術としている、項目の記述がないなどを除外し、看護過程授業科目シラバスの項目ごとの記述内容をテキストマイニング分析に適するデータとなるように、単文(主語+述語)単位に整理した。概要、目的、目標、ねらいなどを意味する項目名は84種類、総単文数1187にのぼったが、意味内容の類似性をもとに再分類し、大きく6項目、「概要」、「目的」、「目的・目標」、「目標」、「内容」「その他」)に整理した。カテゴリー名が記載されていない場合は、内容から6項目のいずれかに分類した。 中世から近代における修道院と看護の世俗化、職業化のプロセスを、フランスを中心として、あわせてマルクス主義、フェミニズム、なども含めた関連文献を検討した。修道院におけるキリスト教の慈悲と救霊の行為としての病人への配慮である看護は、世俗に向けた修道会の活動を起点として18世紀以降次第に看護修道女の活動によって世俗化のプロセスをたどったことを確認し、我々は看護修道女の存在が看護の概念に大きく影響した可能性があると考えている。 臨床看護師インタビューは逐語録を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
シラバスをWEB公開している255大学の記述内容(「概要」、「目的」、「目的・目標」、「目標」、「内容」、「その他」)をテキストマイニング分析し、看護系大学が全体として看護過程教育でめざしている内容を具体的に記述し、大学における看護過程教育の現状を言語化する。 臨床看護師インタビューの逐語録をデータ化してテキストマイニングによる分析を行い、看護診断を含めた看護理論用語の活用の実態と問題点を記述する。 上記二つのデータをもとに、看護基礎教育において、臨床経験がなく、中範囲理論の学修時間が十分には確保できない条件下で現実的に有効な看護診断教育プログラムはどうあるべきか、という新たな問題点について、現職看護教育者にインタビューを実施する。あわせて、看護とは何かを学生に考えさせる科目としても機能する看護過程教育に生かせる看護の成立プロセスの資料として、日本ではほとんど看護教育では教えられていないキリスト教の修道院の活動から看護の世俗化、職業化のプロセスをまとめて、それが英米の看護にどのように影響を及ぼしたかをあと付け、米国看護理論成立の背景として理解できる資料を作成する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:新型コロナ感染症拡大により、3月に予定していた研修や学会が中止となったこと、研究打合せを中止あるいは電話等で行い、旅費が発生しなかったことによる。 次年度は、リモートによる会議が実施できるような環境調整、資料等の郵送代として使用する予定である。
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