2018 Fiscal Year Research-status Report
郷土芸能伝承のための「技能」の質分析による「上手さ」の定量化に関する研究
Project/Area Number |
17K01087
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
松田 浩一 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (70325926)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PRIMA・OKY・ DICKY 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 准教授 (20344624)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 技能 / 可視化 / 角速度センサ / 郷土芸能 |
Outline of Annual Research Achievements |
郷土芸能における熟練者の動きの上手さは,手足の使い方や滑らかさといった要素で表現される.しかし,見れば違うということはわかっていても,何がどのように違っていて,どのようにすればよいのかを説明するのは難しい.そのため,視覚的に違いが理解でき,何をどのように直せばよいのかが判断できるような情報の提示方法が求められている.本研究では,主として舞踊,和太鼓を分析対象とし,それぞれの対象における上手さについて分析方法を提案する. 舞踊については,岩手県の盛岡さんさ踊りを対象とした分析を行った.舞踊の上手さの要素の一つに「柔らかさ」がある.さんさ踊りの柔らかさの特徴の中心は手の動きにある.専門家によると,動きの柔らかさは,関節が体幹に近い方から動き始め,体幹から遠い方へと時間順に動くことで実現されるという.そこで,上腕・前腕・手の角速度を取得し,特徴点の時間差と角速度値を求め,関節間の時間的推移をプロットすることで,被験者の踊り方の特徴を可視化する手法を提案した.実験の結果,被験者の動作の特徴に対応したデータが多く得られており,データの傾向を見ることで,柔らかさの印象をデータとして見ることができる可能性が示唆された. 和太鼓については,岩手県の種市海鳴太鼓保存会と共同研究を行った.共同研究先のにおけるバチさばきにおいての上手さは,手首の可動域の広さやスナップの速さが重要とされている.そのために,上腕,前腕,手の順に時間的な差をつけた動作を行い,この時間差により,鞭のしなりのような効果を得ることができ,良い音を出すことができるという.提案手法では,手の甲に設置した角速度センサによりデータを取得し,時間軸における角速度の推移における特徴点を,指導者の知見をもとに推測する.実験の結果,技量,打ち方,練度,といった特徴が多くのデータ確認でき,分類できる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ターゲットとしたそれぞれの郷土芸能に対し,関節動作を主とする動作の上手さについての定量化を試みた.その結果,感覚的に行い,評価していた対象が数値化できており,感覚と一致する結果が多いことが分かった.このことから,それぞれのターゲットにおいて,暗黙知として持っていた情報を数値で表せる可能性が示唆された.一方で,感覚的な情報と一部合わないデータもあり,分析を進めるとともに次のテーマとして展開する.
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Strategy for Future Research Activity |
ターゲットとしたそれぞれの郷土芸能において,提案手法による可視化結果が感覚的な情報と一部合わないデータがある.これは,手本とする人と技が異なっていることに起因すると予測している. 舞踊においては,腕の振り下ろし動作において,手本がまっすぐ振り下ろすのに対し,可視化結果が感覚的に合わない被験者のデータは,腕にひねりがあることが分かった. 和太鼓においては,上腕,前腕,手の関節間の連動が重要としデータを取得してきたが,映像も含めた分析の結果,指によるバチの握り込みで音を良くしている被験者がいることが分かった. これらのように,手本と異なる特徴量を考慮したデータ取得方法・可視化手法を検討する.
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Causes of Carryover |
旅費が予定より安かったため残額が生じた. 次年度は旅費増となる可能性があるため,その補填に利用する.
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Research Products
(3 results)