2017 Fiscal Year Research-status Report
聴覚障害学生の主体的な学びを支える情報保障システムの開発と評価
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17K01109
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Research Institution | Tsukuba University of Technology |
Principal Investigator |
河野 純大 筑波技術大学, 産業技術学部, 准教授 (90352567)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 情報保障 / 聴覚障害 / パソコンノートテイク / ディスカッション |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、実際の授業場面等の映像データやインタビュー調査により聴覚障害学生や授業担当教員の情報保障ニーズと現状の課題の抽出を実施した。まず、授業場面の情報保障状況の映像収集を行い、パソコンノートテイクの表出が遅くなる状況について、発話から文字表示までに要する時間の計測(即時性)や、発話内容と表示内容との相違の計測(情報の保障度)などを行い、分析した。その結果、聴覚障害学生がパソコンノートテイクを受けながら授業を受ける際に、文字の表出が遅くなる状況について、いくつかの要因を特定することができた。表出が遅くなればなるほど、授業への参加の即時性が損なわれ、ひいては質問をするタイミングを逃すこととなる。本研究で目指している、聴覚障害学生が主体的に学べる状況にないことがうかがえ、適切なタイミングで質問や意見を述べられる必要性があることがわかった。 次に、ディスカッション時の情報保障についての情報収集を行った。上述したように、議論への参加のタイミングが難しい状況にあることから、発言権や即時性を担保するために、これまで実施されてきた事例を収集した。具体的には、運用ルールをしっかり決めてから発言権の移譲を行っている例や、文字通訳ではなく手話通訳の情報保障手段で通訳者が機能的な働きをしていることなどがわかった。パソコンノートテイクをディスカッションに導入した事例では、パソコンを見ながら発言者の表情や様子をつかむことが難しく、情報を受けるだけにとどまる傾向があることなどがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた講義の映像収集やインタビュー調査を実施できたことと、ディスカッション時の映像収集や参加者の詳細な情報保障ニーズの収集の点で若干作業が遅れている部分があることから、おおむね順調に進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は、前年度に抽出された課題を解決するために、主にディスカッション場面で参加者全員が平等に参加できる環境を実現するための情報保障手段を検討する。それらのうち、情報保障ニーズを満たすための技術要件を抽出しシステム開発を行い、システム評価と改善を実施する。 具体的には、平成30年度に情報保障の即時性ならびに充足度と聴覚障害学生の発言の機会の増加、が挙げられる。これらを改善するためには、技術的用件と運用面での工夫の両者が必要で、これらの条件を抽出し、システム開発を行う。その後、平成31年度に開発されたシステムの評価と分析を行い、抽出された課題点の改善を行い最終的なアウトプットとして運用上の工夫も併せたマニュアル作成を行う予定である。
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