2017 Fiscal Year Research-status Report
Articulation Program for Foreign Children (K-16) Ensuring Continuity in Language Proficiency and Social Skills
Project/Area Number |
17K01156
|
Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
加藤 由香里 名古屋外国語大学, 外国語学部, 教授 (90376848)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 光代 名古屋学芸大学, ヒューマンケア学部, 准教授 (00639164)
佐藤 慎一 日本福祉大学, 国際福祉開発学部, 教授 (10410763)
北野 健一 大阪府立大学工業高等専門学校, 総合工学システム学科, 教授 (20234263)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 社会スキル / 学習思考言語 / 教科学習 / キャリア教育 / 学習ポートフォリオ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,学習に関心を持ちにくい外国人児童生徒に対して,小学校から大学進学までの各学習段階に必要な「学習思考言語」と「社会スキル」を組み合わせた実現例を示すことにより,彼らが学習意欲を高め,積極的に現在の学習を意味づけることを支援する。そのために,外国人児童生徒の「現在の習得状況」と「将来の希望する職種に必要な言語能力とスキル」を比較し,その結果を電子的にポートフォリオとして記録することで,継続的な能力獲得活動を支援する学習記録システムの開発を目指している。 今年度は,外国人児童生徒の日本語学習が抱える問題を明らかにするために,文献から教育実践例の収集と整理を中心に行った。その結果,日常生活に必要な「社会生活言語」は来日後1-2年で習得が可能であるが,教科学習に必要な「学習思考言語」は,5-7年の期間が必要とされることが明らかになった。特に,低学年で来日した場合は,学習上の問題を抱えやすく,不登校などの問題が生じていることも報告されている。また,「通訳・翻訳者」,「介護従事者」,「科学技術者」などの日本社会で活躍する知的職業に従事する外国人と接触する機会も限られている。 外国人児童生徒の学力問題については,日本語教育の実践報告だけでなく,教育学,教育社会学などの諸分野からも,その実態が明らかにされつつある。また,教育社会学の研究者を中心に,初等・中等学校での学力が,高校・大学進学など,その後の「進路選択」に大きな影響を及ぼすことが調査により明らかにされている。しかし,児童生徒らの学力向上につながる「学習思考言語」をどのように教えていくのか,問題を抱えた子供たちに対してどう接していくかについては,個々の事例に即した指導指針と実践例が報告されるにとどまり,共有化は十分に行われていない。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は初年度であるため,日本語教育事例,ならびに教育社会学の文献を中心に,外国人児童生徒の抱える問題について調査を行った。加えて,近年,刊行された外国人児童生徒への学習支援,教育実践例に関する報告書を中心に情報収集と問題点の整理を行った。その結果,日常生活に必要な「社会生活言語」と教科学習に必要な「学習思考言語」の習得には,時間のずれが生じること,また,来日時の年齢によって,抱える学習上の問題が異なることが明らかになった。 研究代表者の加藤は,愛知県多文化共生推進室が主催する「外国人児童生徒等による多文化共生日本語スピーチコンテスト」に審査委員長としてかかわり,外国人児童生徒ならびに,保護者,支援者らとの情報交換を行った。また,分担者である大島は,小学校の教員とその小学校に就学する児童の母園である幼稚園・保育園の保育者の言語に関する意識(音韻意識の知識の有無・言語力に関する認識・幼小接続期に育成すべき力としての言語力等)を調査した。この調査から,幼小接続期にある5歳児の時点で,小学校就学後の読み困難が予測可能であることが示唆された。 これらの準備活動を通じて,本研究の目的である外国人児童生徒の継続的な能力獲得活動を支援するシステム構築に向けて,教員,保護者,支援ボランティア,行政担当者らの連携をすすめる条件が検討されている。来年度は,これらの条件を満たす枠組みの構築に向けてさらなる調査と研究グループでの情報交換を予定している。したがって,初年度の計画を満たしていると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,外国人児童生徒に対して,日本社会で活躍するための「日本語」と「社会スキル」の実現例(ロールモデル)を示すために,小学校から大学進学までの各学習段階に必要な「学習思考言語」と「社会スキル」を映像と多言語によって解説した「評価基準表」を開発する。さらに,外国人児童生徒の「現在の習得状況」と「将来の希望する職種に必要な言語能力とスキル」を比較し,その結果を記録できる電子ポートフォリオを整備することで,彼らの能力獲得活動を長期的な視野から支援する。加えて,この機能を広く利用することを検討し,教員,保護者,支援ボランティア,行政担当者らの連携をすすめる新しい接続教育の可能性を探っていく。
|
Causes of Carryover |
当初,外国人児童生徒の支援に携わる関係者へのアンケートを予定していたが,愛知県主催のイベント,ならびに関係者らの研究会に参加することで効率的に情報収集と意見聴取を行うことができた。今後は,本研究グループと外国人児童生徒の支援に携わる関係者らとの公開勉強会を開催する予定である。
|
Research Products
(9 results)