2019 Fiscal Year Research-status Report
伝統的産業の情報発信と商品開発を支援する双方向型デジタルサイネージの開発
Project/Area Number |
17K01165
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
佐藤 慈 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (90412460)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 幹太 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (70159276)
佐藤 佳代 九州産業大学, 芸術学部, 准教授 (70454907)
井上 友子 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (90330787)
進藤 環 九州産業大学, 芸術学部, 講師 (10755838)
星野 浩司 九州産業大学, 芸術学部, 教授 (60552205)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | デジタルサイネージ / プロジェクト型教育 / 伝統的産業 / 地域活性化 / デザイン評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き、博多人形、博多織、大川家具、久留米織の各企業・団体と九州産業大学の連携により、商品開発、デザイン支援、ワークショップなど、伝統的産業の振興と人材育成を目的とした学生主体の産学連携プロジェクトを実施した。 双方向型デジタルサイネージの開発に関しては、前年度に制作したオリジナル博多人形のタッチパネル型デジタルサイネージで得られた知見を活かして、久留米織の商品開発を支援するためのカスタムデザインシステムを開発した。具体的には、2017年度~2018年度の産学連携プロジェクトで商品化された久留米織チュニックの展示に併せてタッチパネル型デジタルサイネージを設置し、3Dモデルが着用したチュニックの形、柄、色を着せ替え人形のようにボタンで選択できるインタラクティブコンテンツを会場を訪れた観客に操作してもらった。ユーザーの属性(性別および年齢)データと一緒に操作した結果を記録し、重回帰分析によってデザイン選択におけるデザイン要素の重要度を分析したところ、標準偏回帰係数の値より、全体および性別ごとに重要なデザイン要素を推定することができた。 開発された久留米織チュニックの双方向型デジタルサイネージは、石橋文化センター(久留米市、アートフェスティバル2019、2019年11月2日~12月1日)、九産大プロデュース展2020(福岡市、イムズ、2020年2月20日~3月1日)、九州産業大学(福岡市、芸術学部卒業制作展、2020年2月22日~3月1日)において展示された。また、昨年度開発されたオリジナル博多人形のための双方向型デジタルサイネージは、福岡市美術館(2020年1月28日~2月16日)において展示された。 本研究に関連して、学生がG20福岡財務大臣・中央銀行総裁会議に合わせてデザインした博多人形のプロモーション用デジタルサイネージを制作し、福岡市内各所で展示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画どおり、地域の伝統的工芸品(博多人形、博多織、大川家具、久留米織)の商品開発およびデザイン支援を目的とした産学連携教育プログラムを3年間継続して実施した。得られた成果は、各年度末に、福岡市内の商業施設において展示会を開催して一般に公開した。展示に向けた準備は、各プロジェクトのリーダーを集めたリーダー会議と、プロジェクト参加メンバー全員が参加する全体会議を定期的に開催して計画的に進めた。いくつかの成果物は実際に商品化され、展示会場等において販売が行われた。展示会においては、来場者および参加学生に対してアンケートを実施し、受け手と作り手の双方から意見を収集した。 双方向型デジタルサイネージの開発に関しては、2017年度は大川家具、2018年度は博多人形、2019年度は久留米織の各プロジェクトで制作された成果物の情報提供と情報収集を目的としたコンテンツを制作した。大川家具プロジェクトにおいては、大川家具プロジェクションマッピング、FaceRigを活用したバーチャルキャラクター接客コンテンツ、商品紹介用タッチパネルを制作した。博多人形プロジェクトにおいては、大川家具プロジェクトで得られた知見を踏まえて、集客コンテンツ、情報提供コンテンツ、デザイン評価コンテンツをシームレスに連携された人気投票システムを開発した。さらに、センサーとAIを活用することにより、ユーザーの性別および年齢を取得できる仕組みを構築し、博多人形のデザインに関する好みの傾向を属性ごとに分析することができた。久留米織プロジェクトでは、さらに発展させて、商品化された久留米織チュニックのデザイン要素(形、柄、色)を、ユーザー自身がタッチパネルで選択できるデザインシミュレーターを開発した。得られたデータに対して重回帰分析を行ったところ、デザイン選択におけるデザイン要素の重要度を推定することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するため、福岡市が主催する行事・イベントが、当面の間、中止もしくは延期されることになったことに伴い、本研究において開発された双方向型デジタルサイネージの設置が予定されていたイベントも、2020年8月まで延期されることになった。研究の目的をより精緻に達成するためには、同イベントでの設置が必要であるため、補助事業期間を延長して設置に向けた準備を継続する。 具体的には、福岡市が主催する博多人形の振興を目的とした市民参加イベントにおいて、学生が福岡市の企業10社をイメージしてデザインしたオリジナル博多人形「ハカタオフク」の展示に併せて、開発したタッチパネル型デジタルサイネージを設置することになっている。集客コンテンツ、情報提供コンテンツ、情報収集コンテンツ(デザイン評価コンテンツ)をシームレスに連携させることを目的として構築された人気投票システムを、デジタルサイネージとして設置し、来場者の動きや反応を調査する。また、デジタルサイネージを通して得られたデータを、過去に収集されたデータと併せて分析することにより、市場における博多人形に対するデザイン嗜好性を分析し、その結果を作り手にフィードバックする。 日本デザイン学会春季研究発表大会において、久留米織チュニックのデザイン評価を目的として開発したデザインシミュレーターの概要と得られたデータの分析結果について発表する予定であったが、新型コロナウイルスの影響で開催中止となっため、今後の状況を見ながら新たな発表の機会を探る。 さらに、本研究で得られた結果を踏まえながら、双方向型デジタルサイネージが、伝統的工芸品の認知度を拡大するための情報発信ツールとして、また、市場ニーズに合ったデザイン開発を支援するための情報収集ツールとして有効に機能するための方策と今後の課題について考察し、論文にまとめる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的として、参加予定であったイベントが2020年度に延期されたことに伴い、そのための経費を確保したことにより、次年度使用額が生じた。また、新型コロナウイルス感染症の状況が落ち着いた場合には、本研究の成果を学会等において発表する予定であり、そのために必要な経費も併せて確保した。確保した経費は、各会場への移動に伴う旅費、イベントにおける展示作業補助のための人件費、コンテンツ制作や展示に必要な消耗品費として使用する計画である。
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Research Products
(11 results)