2018 Fiscal Year Research-status Report
世界大学ランキングの認識論:計量への科学技術社会論的アプローチ
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17K01173
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
調 麻佐志 東京工業大学, リベラルアーツ研究教育院, 教授 (00273061)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大学ランキング / 科学計量学 / 数値の独り歩き |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、平成29年度に実施したインタビューおよび分析に対して、さらに各社のランキングの構成に関して今年度に実施した分析を加え、ランキング作成における恣意性の存在とその問題点・改善点等を明らかにした。また文献データベースから作成した指標を用いて、シミュレーションあるいは統計的な解析を行って、理論的な検討と併せて、各大学ランキングがどのような仕掛けによって生み出されているかについて確認を行った。これらの内容の一部については平成30年8月にシドニーで開催された国際科学論学会で発表した。また、当該の内容をベースに新しい大学の研究評価のあり方等を検討し、その内容については2019年度開催の国際科学計量学会大会にconference paper(Research in progress)として投稿し、採択された。 並行して、新聞記事の内容分析を行った。研究費との兼ね合いで、当初予定の国内主要紙すべてを対象とした分析をすることは断念したが、朝日新聞記事を対象に内容分析や共語に基づくネットワーク分析などを実施し、世界大学ランキングがどのような文脈でどのような問題を対象に語られているかを分析するとともに、計量手法や数字の意味等について「適切な」理解に基づいた記事がかかれているかなどを確認した。分析の結果、当初は教育との関係を中心に語られていた世界大学ランキングが(ゴーマンレポートの影響)、研究中心にシフトするとともに、大学のいわゆるグローバル化が主要トピックとなっていったことが確認された。さらに、東京大学を中心とした国内大学の順位低下にともなって、「アジアのライバル」がまた主要な話題となってきたことも明らかになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した国内主要新聞全紙および(次年度に向けての)国際主要紙の分析については、コスト面から困難が予想されることから、一紙に絞って分析を行うことにした。結果として、得られる情報量が減ってしまったものの、詳細な分析を前倒しで実施し、必要な知見は得られた考えられるので、大きなマイナスとはならずに済んだ。 一方、研究成果については、予定を含め2つの国際学会で公表することができることとなり、順調に取りまとめが進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
国内・国外の新聞の分析はコスト面で難しいことが平成30年度に明らかになった。そこで、大体的な分析手段としてSNS等を活用して代わりのデータを収集することを計画している。そのデータを用いて、2019年度前半は、国内外の大学ランキングに対する反応の違いを分析する。さらに年度後半は、これまでの調査・分析結果をまとめる。すなわち、調査の対象とした各国で大学ランキングの意味が社会的に構成されていく過程を明らかにし、各国の違いがどのような要因に起因するかを明らかにしたい。 研究成果の一部については8月に実施される国際科学計量学会(ISSI)大会で報告する。また、一般向けの書籍あるいはテキストブックによってその一章の形で成果の一部を公表することも進めている。
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Causes of Carryover |
新聞記事データの購入費用が当初見込みより高額なため実施が難しいことが明らかになっので、今年度にその費用の支出を控え、代わりに次年度に新聞に代えてSNSを使用することにした。 したがって、次年度に、新聞記事のデータベースに代わってSNSによるデータ収集を行う際の人件費として使用する計画である。
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