2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K01175
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
宮崎 千穂 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 非常勤研究員 (20723802)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 医学地誌 / 梅毒 / 風土病 / 感染症 / ロシア帝国 / トルキスタン |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、ロシア帝国による中央アジアの植民地化に伴う風土病および感染症対策について、以下のように研究を進めた。 1、ロシア帝国により中央アジアのトルキスタンにおいて発見された風土性梅毒〈マラズ〉は、西欧諸国やロシア帝国の都市部で流行していた性病性梅毒とは異なる。2020年度中は、このマラズがロシア帝国の〈梅毒〉へと再編されるさまを、西洋式病院におけるロシア人医師(女医含む)の医療実践と統計委員会の活動に着目して論じた。この研究は、2019年度にトルキスタン地方の一部に相当する現ウズベキスタン共和国に所在する国立中央歴史文書館および国立ナヴァーイー記念図書館等で収集した史資料を基にし、ロシア史研究会大会で報告したものであるが、2020年度はそれをさらに発展させ論文として『ロシア史研究』に掲載した。 2、トルキスタンのロシア軍で流行していた性病性梅毒に対しては、19世紀西欧に特徴的な医療警察的対応が採られていた。2020年度は、ロシア帝国によりトルキスタンへ医療警察が移植されるさまについて、ウズベキスタン国立中央歴史文書館所蔵史料の分析を進めた。この成果は、論文として2021年度中に公にする予定である。 3、近代中央アジアにおける感染症対策と2019年末以降世界的に流行している新型コロナウィルス感染症対策を比較し、それぞれの特徴を明らかにするため、ウズベキスタンにおける同ウィルス感染症対策についての研究を進め、2020年秋にグローバルヘルス合同大会2020大阪にて発表した。 上記2、3について、論文として公表する準備を進め、新しい知見を得るためウズベキスタン等の海外での史資料調査および研究者との会議を予定していた。しかし、新型コロナウィルス感染症の流行が収束せず、2020年度中に海外へ渡航できなかったため、本研究を2021年度まで延長し、同年度中に研究成果を公にする予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度中に、ウズベキスタン共和国に所在する公文書館および図書館において、本研究の課題の解決に必要な史資料調査を行う予定であったが、新型 コロナウィルスの世界的流行が収束せず、同地への渡航および研究調査活動ができなかった。そのため、研究の進展に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、2021年度も継続して実施する。19世紀のロシア帝国のトルキスタン地方の医療・医学・衛生のあり方については、これまであまり光を当てられなかった研究分野であり、現地のウズベキスタンなど中央アジアやロシア所在のアーカイブス史料の発掘が不可欠である。2021年度もそうした一次史料の調査収集につとめ、その分析、考察を進めることで、新たな医療・医学・衛生の近代を描くことをめざす。 新型コロナウィルス感染症の流行が収まらず、海外渡航による史資料調査が不可能となる場合には、日本国内で入手可能な感染症および風土病対策史資料を用いて研究を進める。
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Causes of Carryover |
当初の年次計画において、2020年度中にウズベキスタンへ渡航し、国立中央歴史文書館およびナヴァーイー記念国立図書館において史資料の収集、および、これまでの研究内容の確認を行うことを予定していた。しかしながら、同国および日本において新型コロナウィルス感染症の流行が収束せず、海外渡航が困難であったため、それらを中止し、研究期間を2021年度まで延長して研究を発展させることとした。
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