2017 Fiscal Year Research-status Report
新・旧岩倉病院資料と北山病院保管今井家資料の分析に基づく精神医療史の研究
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17K01177
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中村 治 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (10189029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新宮 一成 奈良大学, 社会学部, 教授 (20144404)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 岩倉 / 今井保養所 / 岡山保養所 / 渡辺保養所 / 精神科看護 / 茶屋 / いわくら病院 / 北山病院 |
Outline of Annual Research Achievements |
北山病院に関しては、北山病院が保管する「今井家(江戸時代からの茶屋)文書」の活字化を進めた。今井家は、江戸時代には茶屋、昭和時代には保養所を名乗ったところであり、患者預かりに最も古くからかかわったところである。文書の解読はまだ中途段階であるが、江戸時代から明治時代初期の患者預かりの様子をうかがわせてくれるものであることがわかってきた。 (新)いわくら病院に関しては、同病院所蔵の写真資料を複写し、その分析を行った。(新)いわくら病院は、江戸時代の茶屋「藤屋」に由来し、昭和時代初期には「岡山保養所」と名乗り、戦後、「岩倉病院」と改称し、昭和40年代末頃から開放医療を積極的に行ったところである。その開放医療の様子を写真資料で確認することができた。 そうして得られた新たな知見を組み込んだものを、2017年7月にプラハのCharles Universityで開催されたXXXVth International Congress on Law and Mental Healthにおいて、そして2017年8月に京都大学医学部精神科の精神医学セミナーにおいて発表した。 また、2018年3月23日には、研究分担者の新宮一成奈良大学教授とともに岩倉を歩き、昭和時代初期の渡辺保養所を経営していた渡辺謙助氏の息子である渡辺道夫氏から、当時の保養所の様子を聴いた。そして3月30日には、奈良大学で開催されたセミナーで、精神科看護と地域の関係について、看護教育や臨床心理に従事している人たちに講演し、意見を交換した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「今井家文書」の複写はほぼ終えているが、「今井家文書」は手書きの古文書であるため、その解読・活字化・分析は容易ではなく、まだ継続中である。 しかしいわくら病院所蔵写真を複写することができ、戦後の開放医療に関する貴重な資料を得ることができた。 また、研究の中間報告をプラハで開催されたXXXVth International Congress on Law and Mental Healthにおいて行い、諸外国の研究者と意見交換をした。
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Strategy for Future Research Activity |
岩倉病院も北山病院も、昭和30年代に患者の定員オーバーを指摘されたことにより、そして昭和40年代中ごろからは特に岩倉病院が開放医療を急激に導入したことにより、病院と地域の関係が悪くなったが、その後の病院、地域双方の努力により、今は病院と地域の関係は良好になっている。その後、いわくら病院(岩倉病院が改称した病院)は、患者をできるだけ地域に戻す努力を続け、他方、北山病院は、特に認知症患者を長期間預かる施設を増やすという方向に進んでいった。認知症患者を長期間預かるのも大変であるが、精神疾患をかかえた患者を地域に戻すのはもっと大変である。それにもかかわらず、地域との関係が密接になっていったのは、北山病院の方であった。これは精神医療と地域との関係を考えるうえで、興味深い事実である。精神病を「なおる」「なおらない」の視点で見るのではなく、患者の家族や地域と病院あるいは受け入れ施設との関係において見るという視点が大切ではないかと思うようになった。その視点から岩倉の患者預かりの歴史を見直していきたい。
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Causes of Carryover |
プラハでの学会に参加し、発表したため、旅費が予定より多くなったが、物品費が少なく、だいたい予定通りの額になった。しかし796円の未使用額が残った。 今年度も、前年度と同じような使用計画をたて、研究を進め、発表していきたい。
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Research Products
(4 results)