2018 Fiscal Year Research-status Report
新・旧岩倉病院資料と北山病院保管今井家資料の分析に基づく精神医療史の研究
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17K01177
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
中村 治 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (10189029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新宮 一成 奈良大学, 社会学部, 教授 (20144404)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 岩倉 / 大雲寺 / 茶屋 / 京都癲狂院 / 岩倉病院 / 南方熊楠 / 呉秀三 / 岩倉癲狂院 |
Outline of Annual Research Achievements |
江戸時代、岩倉の大雲寺門前茶屋が介護人を雇うことによって、患者が家族の同伴なしに滞在できるようになった結果、岩倉の茶屋における患者預かりは大いに評判となった。しかし明治8年、京都癲狂院が南禅寺大方丈を用いて開設されると、岩倉における患者預かりは、医療を伴っていないという理由で突然、禁止された。ところが明治15年、京都癲狂院は、任他主義への政策転換、財政難を理由に閉鎖され、患者がまた岩倉に戻ってきた。その患者を、岩倉の茶屋は従来通りの仕方で預かろうとしたが、京都府は、「任他主義をとっていたにもかかわらず、行政介入を行い、明治17年に岩倉癲狂院を設立させた。その一連の経過があまりにも不自然なので、呉秀三の「我邦ニ於ケル精神病ニ関スル最近ノ施設」(1912年)、北山病院所蔵今井家文書などを手掛かりに解明を進め、西南学院大学で2018年11月に開催された精神医学史学会で発表し、問題を提起した。 明治、大正、昭和における岩倉の精神医療に関しては、岩倉病院患者入退院簿の解読を進めた。 また、昭和3年から昭和12年まで岩倉病院に入院していた南方熊弥のことを、その父である南方熊楠が手紙や日記に詳細に記しているが、それらを通して精神病に対する南方熊楠の考え方、岩倉病院の考え方、患者家族が求めていたものを浮かび上がらせ、田辺市で2018年8月に開催された南方熊楠研究会で発表した。 2019年3月には岩倉で精神医療史研究会を開催するとともに、奈良市右京1丁目3-4 サンタウンプラザすずらん館のギャラリーで、岩倉の精神医療に関する展示会を開催し、岩倉の精神医療史に関する研究成果の公表に務めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岩倉病院入退院簿の分析は少し遅れているが、南方熊楠の手紙や日記を通して岩倉病院の考え方を浮かび上がらせることができたのは、大きな成果であった。また、明治時代初期の京都癲狂院の設立と岩倉における患者預かりの禁止、京都癲狂院の閉鎖と、京都府が行政介入をしてまで岩倉癲狂院を設立させたことの不自然さに関する研究を進めることができたのも、大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
岩倉病院入退院簿の解読、分析を進めることによって、岩倉の精神医療を解明するとともに、北山病院所蔵今井家資料の解読、分析を進めることにより、明治時代初期の京都癲狂院の設立と岩倉における患者預かりの禁止、京都癲狂院の閉鎖と、京都府が行政介入をしてまで岩倉癲狂院を設立させたことの不自然さに関する研究をさらに進めたい。そしてその成果を国内外の学会などを通じて発表していきたい。
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Causes of Carryover |
多忙のため、当初、予定していた調査や、学会参加をできなかったのが大きい理由である。今年度は、岩倉病院入退院簿の解読と分析、学会参加などを行い、岩倉の精神医療史の解明、啓蒙、さらには今後進んでいくべき方向についての検討を進めたい。
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Research Products
(8 results)