2018 Fiscal Year Research-status Report
Study on Models of Public Communication on Biological Science and Technology
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17K01180
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
林 真理 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (70293082)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 科学技術コミュニケーション / 生命科学史 / ライフサイエンス |
Outline of Annual Research Achievements |
生命科学技術を巡るコミュニケーションのあり方についての考察の基礎として、生命科学研究所(研究施設)についての歴史的研究を行った。とりわけ社会的に大きな問題を構成したBSL-4(P4)施設の立地・建設を巡る議論をたどった。茨城県谷田部町(当時)における理化学研究所ライフサイエンス筑波研究センター開設の事例は比較的詳細な記録が残されているため、主として国立感染症研究所(旧予防衛生研究所)村山庁舎における同施設を巡るさまざまなアクターの動きや議論の内容についての歴史を明らかにすることが最初の課題となった。関連する人物の手記、当時のマスメディアの報道、地方自治体の議事録等の文献調査およびインタビュー等を通じて、ある程度経緯の再構成に成功した。他方で、筑波のケースに加え、P4施設ではないものの同じく比較的良く知られている国立感染症研究所の目黒から戸山への移設に伴う論争という事例も参照することで、武蔵村山のケースの特徴を明らかにすることができた。 武蔵村山支所のケースは、筑波や戸山と異なり、施設建設の既成事実が先行し、事後的に論争が生じた。そのような事態を招いた理由には、研究施設の立地を巡る問題に関して、地元住民、自治体、研究所の三者で大きな理解の違いがあったことがわかった。ここに「ライフサイエンス」勃興期における生命科学と社会に関する問題点を見出すことができた。また、それをコミュニケーションの観点から理解することができた。 その後、研究の中止と施設の移転の検討という三者間の合意を得ることにより、問題は一応の解決を見るが、そこでは地元の議会と自治会が大きな役割を果たした。その経緯は、研究所の置かれた諸環境に大きく依存するものであり、したがって研究所(研究施設)の立地・建設を巡るコミュニケーションというものは、諸環境に応じた極めて固有なプロセスを必要とするものであることがわかる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献取り寄せに伴う調査は進んだが、現地での調査に時間をとるのが難しく、あまり進めることができなかった。そのため、歴史的な側面についての研究は進んだが、現状の分析とモデル化についてはアウトプットできるだけのまとまりができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
おおよそ目処がついてきた歴史的な問題についてのアウトプットを行う。また、現状理解についての理論的な考察に進んで、年度内にまとまりを付ける。
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