2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study on Models of Public Communication on Biological Science and Technology
Project/Area Number |
17K01180
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
林 真理 工学院大学, 教育推進機構(公私立大学の部局等), 教授 (70293082)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 科学技術コミュニケーション / BSL / バイオセキュリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
生命科学技術を巡るコミュニケーションのあり方についての考察の基礎として、生命科学研究所(研究施設)についての歴史的研究を行うことを考え、とりわけ社会的に大きな問題を構成したBSL-4(P4)施設の立地・建設を巡る議論をたどった。 昨年度までのあいだに、主として国立感染症研究所(旧予防衛生研究所)村山庁舎における同施設の立地・建設を巡るさまざまなアクターの動きや議論の内容についての歴史を明らかにするため、関連する人物の手記、当時のマスメディアの報道、地方自治体の議事録等の文献調査およびインタビュー等を通じて、ある程度経緯の再構成に成功し、地元住民、自治体、研究所の三者で大きな理解の違いがあったことがわかった。他方で、公的な記録に残っていない当時の住民の考え方の多様性や動きについては、さらに探究すべく文献調査やインタビューの試みを続けたが、あまり進展が見られなかった。 現状についても並行してレビューしていたため、2014年~19年の感染症研究所村山庁舎におけるBSL-4(P4)施設稼働までのコミュニケーションについての調査を進める方向で本年度は研究を行った。こちらは、ウェブ上の文書の利用、会議の傍聴、インタビュー調査によって行うことができたため、稼働までの経緯の概要と、村山庁舎によって行われたコミュニケーション活動の現状と問題点をまとめた。村山庁舎においては、近隣自治会、近隣施設、行政とのつながりを重視し、これらの特定のステークホルダーに対して、頻繁に、対話的なコミュニケーションを行ってきたが、参加型で幅広い市民に届くようなコミュニケーションや、熟議型のコミュニケーションはほとんど行われてこなかったことを示すことができた。他方で、こういった現状がどのようにして導かれたのか、既に調査した経緯から理由を分析する課題は残されていると考えている。
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