2020 Fiscal Year Research-status Report
Historical study on the introduction of quantum mechanics and development of condensed matter physics and chemistry in Japan
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17K01181
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
中根 美知代 成城大学, 法学部, 非常勤講師 (30212088)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 量子力学の日本への移入 / 仁科芳雄 / ユーバーシャル / ライプツィヒ大学 / 理化学研究所 / ゲッチンゲン大学 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍のため、予定していた資料収集ができなかった。そこで、手持ちの資料を整理・検討したり、Webで入手できる資料を活用して研究活動を行った。オンラインによる学会発表も行った。 昨年度から注目している、ライプツィヒ大学・理論物理学部門と理化学研究所が交換留学制度が結ばれる過程を日独文化交流の視点から再検討した。この制度の締結にあたっては、ライプツィヒ大学・日本語教室の教授で、日本での滞在期間も長く、最終的には、神戸で生涯を閉じたユーバーシャルが重要な役割を果たしていたことがわかった。1937年に、この制度で留学した朝永振一郎がまず挨拶に行ったのがユーバーシャルということも納得できた。ライプツィッヒに在職していたデバイとハイゼンベルクを訪問する日本人物理学者・化学者が多かったのは事実だが、交換留学制度締結の上では、ライプツィッヒ大学がドイツで初めて日本語講座を置き、さらに日本語研究所も設置するなど、日本への関心が高かったことが、この制度が成立した一因だったことがわかった。当初は個別の研究機関の間での交換留学制度であったが、やがて、1938年に締結・発効した外務省・文部省管轄下の日独文化協定の一部として組み入れられたと察せられる資料も発見した。 また、研究課題が対象とする時期から少し幅を持たせ、1923年から1930年頃にかけて、量子論および量子力学に必要な数学的手法であるハミルトン・ヤコビ理論や群論が、ゲッチンゲンやチューリッヒを舞台にして進展していることと、その地とかかわった研究者の移動、各地での量子力学での進展状況を照らし合わせた。これらに基づいて、ヨーロッパ各地に留学した日本人研究者が持ち帰った成果についても、検討を始めていく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ禍のため、所属していない研究機関が所蔵している文書が閲覧できず、必要な資料が入手できなかった。また、オンライン授業等で、研究組織構成員の教育負担が異常に増加し、この課題に割ける時間や労力が激減した。このような要因で、当初の計画がほとんど実施できなかったため、上記のような評価にした。
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Strategy for Future Research Activity |
計画より1年弱遅れているという理解で、当初の研究方針に基づいて進めていく。多くの研究機関での文書の利用制限が多少緩やかになると見込まれる一方で、Webによる資料や情報の提示がコロナ禍以前より進んできた。状況によっては、このような資料で実施できるよう、計画を適宜修正する。 オンライン授業にも慣れてきたため、研究時間の確保も、昨年ほど大変ではない。また、Web会議システムによる情報交換に抵抗がなくなってきたので、積極的に利用していく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で、資料収集・研究連絡による旅費が拠出できなかったため。感染の終息状況と見合わせて、可能なところから、それらを実行に移す。閲覧・貸借したい資料が購入可能であれば、購入を検討する。オンラインによる研究連絡がある程度まで可能なことがわかったため、それに伴う機材やアプリの購入にあてる。
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