2018 Fiscal Year Research-status Report
医療の「近代化」と地域社会:近世・近代日本における地域医療の連続と断絶
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17K01182
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Research Institution | Senshu University |
Principal Investigator |
廣川 和花 専修大学, 文学部, 准教授 (10513096)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域医療 / 医学史 / 診療録 / 医療アーカイブズ / 梅毒 / 医療史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に(1)地域医療関係資料(主として研究の中核的対象時期である幕末・明治期の開業医資料)の調査・画像データの取得、(2)収集した各資料に対応した論点の抽出と具体的な資料の分析を行った。 すなわち、昨年度から継続して行っている地域医療関係資料の所在把握と調査を進めつつ、複数の明治期の開業医の資料、中でも特に診療に即した記録を重視して具体的な分析を深めてきた。これらの調査・分析に際しては、資料所蔵者・資料所蔵機関の学芸員や現地の医療史専門家、および研究協力者からの適切な専門的知識の提供と助言を得て、今年度も効率的に進めることができた。 分析の視角としては、昨年度に引き続き、地域医療の供給主体としての医師に注目し、その活動範囲の地域の医療環境を把握した上で、その診療行為のもつ社会的・疫学的意味を検討してきた。今年度は特に、奥州街道沿いの旧宿場町で遊郭が所在する栃木県塩谷郡喜連川町に焦点を絞り、喜連川病院の診療記録から見えてくる地域の梅毒罹患状況を、この地域の諸条件や医療環境とあわせて重点的に分析した。 上記内容の中間的な成果報告を行う機会も国内外で複数得られたため、そこでの幅広い情報交換により、ジェンダー史の性売買に関する研究蓄積や近世・近代移行期の社会史分析の手法からも多くの視点を取り入れることができた。各種学会報告や学術論文・著作の新たな成果をも参考にして、方法論の明確化をはかることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究開始時に想定していたほど多くの種類の地域医療関係資料の所在把握や資料調査を進めることはできなかったが、すでに把握済みの資料群の分析を進める上で必要な、その資料群に関連する当該地域の地域社会構造を把握するための情報の収集に重点を置いて研究した。具体例としては、新聞史料、県の各種法令、地図資料などである。直接的な医学資料だけではなく、こうした地域史に関わる基本情報を集めることができた。 次に資料の分析であるが、収集した資料の内にはまだ具体的な分析を進められていないものも一部残っているが、栃木県塩谷郡内のいくつかの地域に関しては具体的なテーマや視角を設定した上で順調に分析が進んでいる。また、成果報告の機会に有意義な情報や助言を得ることもできたため、中間の年度としてはおおむね順調に進めることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
所在が把握できているものの未だ調査が実施できていない資料については、所蔵者の側の事情等もあることから、研究協力者の協力等も得ながら、できる限り継続して試みる予定である。すでに蓄積した資料データの分析については、アルバイト等も活用しながらデータの整理を効率的に進行させ、結果をまとめたい。
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Causes of Carryover |
2019年3月に実施した研究成果報告に関して、ワークショップの主催機関によって旅費が一部負担されることとなり、当初の予定から余剰が生じた。そのためこの金額を翌年度分と合わせ、研究成果公表等のために有効に活用する予定である。
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Research Products
(9 results)