2019 Fiscal Year Research-status Report
Research on conservation materials and application methods for gypsum-ground secco wall paintings
Project/Area Number |
17K01192
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
谷口 陽子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40392550)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 二水石膏 / グラウト / モルタル / 遅延剤 / セッコ |
Outline of Annual Research Achievements |
文献調査から、中央アジアから西アジアにかけての地域における石膏や石灰の利用についての概略を得た。無水石膏を利用しているとする事例を調査したところ、二水石膏がのちの時代に検出されている事例が多くみられた。 エジプト、イニ・スネフェル・イシェテフ壁画(古王国)の保存と分析調査を進めた。石膏地の最も古い事例のひとつとして位置づけられる。マルチスペクトルイメージングの手法も取り入れ、面的に材料分析を行うことを可能とした。石膏をグラウトやモルタル材として使用した。 トルコ、聖シメオン教会の壁画を分析調査し、石膏地の壁画に関する知見を得た。純度の高い石膏が選択的に利用されていること、必ずしも無水石膏の状態ではなく二水石膏として材料が生成されていることを確認した。LC-MS分析、ELISA分析により、これらの7-10世紀の壁画にはタンパク質を含む膠着材(動物膠や植物ガムなど)をまったく利用したものではなく、むしろ、無膠着材で彩色されたものであろうという新しい知見を得た。これは、この地域の技術が、地中海のフレスコ・ア・セッコに影響を受けたものである一方で、在地の石膏を利用しているために、起こるべき炭酸塩化という過程のない彩色になってしまっていることを示唆する可能性がある。このような技術は、ビザンティン世界のなかに普遍的に見られることであるのか、この地域にのみ存在するものであるのか、比較研究が今後必要であろう。 グラウト材としての石膏の利用については、本研究で作成した配合を基に、トルコの他の遺跡でも応用検討を実施しているところである。石膏地の彩色を持つ遺跡の保護に、ひろく応用できる可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年延長し、春に、イギリスにおいて石膏壁画について国際シンポジウムで発表する予定であったが、Covid-19のためシンポジウム自体が中止となり、プロシーディングも作成されないこととなった。成果報告の場として、別の機会を検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
比較研究として、石膏地の壁画研究を行っている研究者(トルコ)から、データの共有をしたいと申し入れがあった。双方の持つ分析結果を比較し、可能であれば論文としてその成果をまとめるよう予定している。
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Causes of Carryover |
当初2020年3月に予定していた国際シンポジウムが延期されて2020年4月になった。その後、Covid-19により中止となり、発表中止となった。別途、発表の機会に利用する。
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[Journal Article] Scientific Research for Conservation of Rock hewn church, Uzumlu(Cappadocia) in 2016: Chapel of Niketas the Stylitis in Red Valley2020
Author(s)
Taniguchi, Yoko, Iba, Chiemi, Koizumi, Keigo, Temur, Hatice, Yalcinkaya, Ugur, Acikgoz, Fazil,Gulyaz, Murat
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Journal Title
36. Research Results Meeting
Volume: 3
Pages: 515-532
Int'l Joint Research
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