2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K01196
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
川久保 善智 佐賀大学, 医学部, 助教 (80379619)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 憲五 佐賀大学, 医学部, 助教 (00635568)
竹下 直美 佐賀大学, 医学部, 技術職員 (30770094)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 復顔 / 古人骨 / CTデータ / 縄文人 / 弥生人 / 現代人 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本列島の考古学的な遺跡から出土した人骨から生前の顔貌を復元する「復顔」を行う際に指標となる、形態学的な基礎データを収集し、新しい手法を構築することが本研究の目的である。これらの復顔法は身元不明死体の個人識別など、法医学の分野においてもそのまま応用が可能である。本研究では、佐賀大学附属病院の放射線科に蓄積されているCTデータをもとに、北部九州を中心とした現代日本人の様々な年齢、性別の頭部で、軟部組織の厚さやさらにCTの利点を生かした表面形状と骨の詳細な対応関係のデータを収集し、従来の復顔法を再検証していく。従来の復顔法は主に欧米で開発されてきたが、これらの方法がそのまま東アジア人にも応用できるのかを見極めていきたい。例えば、眼球が眼窩の骨格に対してどの程度突出しているのかを決める方法は、顔面の平坦性が欧米人と東アジア系住民(現代日本人も含まれる)では大きく異なるが、そのまま適用できるのかという問題が未検証のまま残されている。また、鼻尖や鼻根部など、鼻の形状の指標についても再検証していきたいと考えている。2018年度は放射線科で壮年期と未成年の現代人データの収集を行い、平行して「産総研製相同モデル作成」と「相同モデル支援」のソフトウェアの応用方法の検討、調査・分析の環境整備を2017年度に引き続き行った。また、日本列島の住民は大きく旧石器時代からの先住民である縄文系住民と紀元前1000年以降に中国や朝鮮半島から渡ってきた渡来系住民との混血によって構成されているといわれているが(二重構造モデル)、縄文人と渡来系弥生人の頭蓋の三次元デジタイザーを使用した形態分析の結果、両者は眼窩から鼻根部にかけて三次元的にも大きく異なることが明らかになった。これらの結果を応用し、現代人を縄文系、渡来系に分けて分析を進めるとこにより、より詳細な日本列島人の復顔が可能になると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は歯槽の形状を大きく損なう齲歯の治療や歯槽膿漏などの影響が少ない未成年から壮年期までのデータを集中的に収集した。導入している「産総研製相同モデル作成」と「相同モデル支援」のソフトウェアのテストを通して応用方法の検討を行い、2019年度から行う調査・分析の環境整備はほぼ完了している。三次元デジタイザーによる古人骨の3DデータとCTデータの互換性についても検討を継続中である。
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Strategy for Future Research Activity |
現代日本人の様々な年齢、性別の頭部で軟部組織の厚さやさらにCTの利点を生かした表面形状と骨の詳細な対応関係のデータを収集し、従来の復顔法を再検証し、問題がある場合は新しい手法を開発していく予定である。さらに古人骨の3次元的な形態分析から得られた情報を基に現代人のCTデータを縄文系、渡来系に分類し、それらの軟部組織に違いがあるのかどうかを検討する。形態的、遺伝的先行研究から、日本人全体における縄文系の遺伝的影響は2~3割と言われており、この系統別の分析を行うために2018年度は壮年個体の男女各100例のデータを収集した。引き続き、三次元デジタイザーによる古人骨のデータの補強も併せて行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は当初2018年度から導入予定だったソフトウェア2つのうち1つのサブスプリクションを行わなかったのと、分担者の1名が2019年4月より1年間産休および育休に入ったため、研究期間を3年から4年に伸ばすため、4年目のソフトウェアのサブスプリクション費を捻出するため、出費を抑えたためである。次年度使用額は31年度請求の研究費と合わせてソフトウェアのサブスクリプションや個人骨資料のデータ収集、成果発表の旅費として使用する予定である。
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