2017 Fiscal Year Research-status Report
日韓新石器時代における鱗茎利用の時空間的変遷の解明
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17K01198
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
佐々木 由香 明治大学, 研究・知財戦略機構, 研究推進員 (70642057)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鱗茎 / 縄文時代 / 新石器時代 / 日韓 / 植物利用 / 加工技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)現生鱗茎標本の採取・観察 先行研究により収集した鱗茎のリスト(10種)を基盤として、東北大学植物園の協力の下、春と秋の2回に渡って現生鱗茎標本の収集した。実体顕微鏡下で収集した鱗茎の外部形態(横断面)の観察・計測と写真撮影を行い、生の鱗片から包埋切片を作製して、組織を観察し、前科研で開発した同定基準を補強、高精度化した。 2)遺跡出土鱗茎の収集・観察・同定 宮崎県王子山遺跡から出土した縄文時代草創期の炭化鱗茎の種類の同定を行い、ツルボと同定した。本科研以前も検討したが、その際には同定の基準は定まっていなかった。鱗茎は、13400年前の年代が与えられており、日本列島最古の鱗茎がツルボであることを明らかにした。また鹿児島県芝原遺跡から出土した縄文時代後期の土器付着炭化鱗茎の同定を行い、ツルボと同定した。これらの成果は、日本植生史学会で発表した。富山県小竹貝塚から出土した土器付着炭化鱗茎の同定を行い、ツルボであることを明らかにした。現在論文を投稿中である。茨城県上境旭台貝塚から土器付着炭化鱗茎が複数個体出土していることを確認し、次年度分析を進めるべく土器の選定を行った。さらに、東京都多摩ニュータウン遺跡群の縄文時代中期の土器圧痕に鱗茎が含まれていることをレプリカ法によって明らかにし、論文で公表した。ただし、圧痕のレプリカでは細胞レベルの検討ができず、鱗茎の科以上の同定はできなかった。弥生時代初期の鱗茎利用を検討するため、神奈川県中屋敷遺跡出土土坑覆土の水洗作業を行い、炭化植物遺体の検討を行った。 3)現生鱗茎を用いた実験・民俗調査 今年度は実験はできなかったが、韓国におけるツルボ利用の民俗調査を行い、いくつかの文献から利用や食用化にあたり重要な示唆を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は関東・中部地方を中心とした出土炭化鱗茎を調査予定であったが、関東地方での新たな炭化鱗茎出土遺跡が得られたことや、過去の調査の炭化鱗茎を再同定したため、調査を予定していた遺跡の検討が全てできなかった。また、炭化鱗茎だけでなく、土器圧痕としても鱗茎を見出したため、研究対象が当初よりも広がった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度に平成29年度調査予定であった遺跡出土鱗茎の調査も合わせて調査を行っていく。また、新たに土器圧痕として鱗茎がしばしば残存することが明らかになったため、土器に鱗茎を埋め込むなどの実験を重ね、圧痕での鱗茎の同定方法も模索する。
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Causes of Carryover |
3月分の研究補助業務の支払い金額が残金より大きくなり、次年度分の直接経費と合わせて支出することにしたため。
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