2018 Fiscal Year Research-status Report
Provenance study of natron glass found in Japan using strontium isotopes
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17K01207
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
田村 朋美 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (10570129)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ナトロンガラス / ストロンチウム / 同位体比 / 産地 / カリガラス |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、比較のためにナトロンガラス(Group SI)ガラス以外のガラスについて集中的に検討した。一つは、主成分の化学組成はナトロンガラス(Group SI)と類似するが、典型的なナトロンガラスと比較すると微量元素や製作技法の点でいくつかの重要な相違があるため、筆者らが「ナトロン主体ガラス」として典型的なナトロンガラスからは除外しているグループ(Group SIV)である。GroupSIVのガラス小玉は、製作技法上は典型的なインド・パシフィックビーズであるため、本グループのガラス素材が地中海周辺地域産であるのか、インド~東南アジア産であるのかという問題は、古代のモノや人、技術の移転を考えるうえで極めて重要である。 本年度、ナトロン主体ガラスについてSr同位体比を実施した結果、典型的なナトロンガラスよりもSr同位体比が高い値(0.7097-0.7105)にまとまる結果となった。このような値は地中海地域で出土するナトロンガラスとは明らかに異なる。すなわち、Group SIVは地中海周辺地域で生産されたいわゆる「真正の」ナトロンガラスと判断することはできないという結論が得られた。ただし、他の「アジアのガラス」に比べると低い値であることから、ナトロンガラスとアジアのガラスが混合された可能性は残る。 さらに、本年度はインド~東南アジアで生産されたと考えられるカリガラスおよび高アルミナソーダガラスのSr同位体比を測定した。その結果、これらのガラスは昨年度に実施した地中海産のナトロンガラスとは全く異なる値を示した。特にカリガラス(Group PI)は今回調査した資料の中で最も高い値を示した。筆者らは製品の流通状況などからGroup PIのカリガラスについてインド産の可能性があると考えているが、インドのガンジス川流域の土壌は高いSr同位体比をもつことが知られており、関連性が注目される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はナトロンガラス(Group SI)との比較として、ナトロン主体ガラス(Group SIV)のSr同位体比分析を実施する予定であったが、昨年度に計画が予定以上に進展したため、本年度は予定のナトロン主体ガラス(Group SIV)に加えて、カリガラス(Group P)についてもSr同位体比分析を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Sr同位体比分析に加えて、鉛同位体比分析を併せて実施することにより、着色剤原料(特に、コバルト原料)の産地を推定する。日本出土のナトロンガラスには消色剤と考えられているアンチモン(Sb)を多く含むものが存在するが、その場合でもコバルト(Co)によって強く着色されている。これは、ガラス素材の生産地とガラスの着色が行われた場所が異なる可能性を示唆している。本研究では、着色剤のコバルト原料に付随する成分と考えられる鉛(Pb)の同位体比分析を併せて実施することにより、着色剤原料の産地を推定し、ガラス素材の産地とガラスの着色が行われた場所の異同について明らかにする。 また、比較対象として、典型的な植物灰ガラス(Group SIIIC)や、インド~東南アジア産と考えられる高アルミナタイプのソーダガラス(Group SIIBなど)についても調査を実施する。 最後に、全期間における分析調査結果を総括し、学会誌に投稿するなどの方法で、成果を発信する。
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Causes of Carryover |
鉛同位体比分析(外部機関委託)用の資料1点の調達が遅れたことに加え、委託業者が年度末業務多忙のため年度内に成果報告が完了できないという状況だったため、一部資料の分析(1点)について次年度に先送りしたため。
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Research Products
(17 results)