2017 Fiscal Year Research-status Report
博物館による特別支援学校と連携したインクルーシブ教育システム構築の実践的研究
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17K01211
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
駒見 和夫 和洋女子大学, 人文社会科学系, 教授 (20225577)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 博物館教育 / インクルーシブ教育支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
各種の特別支援学校の教員がそれぞれの学校教育において博物館をどのように捉え、何を求めているのかを把握するアンケート調査を実施した。千葉県市川市および東京都葛飾区・江戸川区内所在の特別支援学校の教員を対象として、10校の408人から回答を得た。学校種の内訳は、知的特別支援7校(小・中・高等部)、視覚特別支援1校(小・中学部)、聴覚特別支援2校(幼稚部、小・中・高等部、専攻科)、肢体不自由特別支援1校(高等部)である。アンケートは30年の6~7月に各学校へ依頼し、8月中に回収を終えた。集計後、その結果をもとに一部の教員へ補足の聞き取り調査を実施した。アンケートの集計と分析は29年度中に終了した。回答分析で顕著だったのは特別支援学校による博物館学習の低調さである。過去1年間に利用のない教員が全体でほぼ7割という値であった。とくに知的特別支援の利用率が低く、博物館利用者として想定されていないと捉える認識も捉えられた。さらにこの分析から、特別支援学校の児童生徒の博物館学習を促進するうえで、博物館出前講座と体験型のICT学習ツールの有効なあり方を把握することができた。 また、特別支援学校への博物館出前講座プログラムの作成に着手した。和洋女子大学文化資料館で実践していた既存のプログラムをもとに、29年度は聴覚特別支援と知的特別支援での実践を想定し、当該学校を訪問して教員とのディスカッションをおこない、学芸員と教員の双方の視点で内容を組み立てるように工夫した。また、出前講座での活用を目的に博物館資料の教材化に向けた検討作業を、和洋女子大学文化資料館の収蔵資料をもとに進め、博物館体験型のe-ラーニング学習ツールについて検討して、そのプラン作りに着手した。 これと並行して、博物館における特別支援学校に向けた対応の実際について、千葉県東葛・葛南地域、東京都区部東域の博物館を対象に実態調査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の基盤となるのは特別支援学校の教員へのアンケート調査であり、それが支障なく実施できた。対象地域には11の特別支援学校があり、アンケートの回答が得られなかったのは1校だけであった。学校種も知的・聴覚・視覚・肢体不自由の各学校の教員から回答を得ることができた。このアンケートの集計は終了し、分析作業も完了している。 特別支援学校への出前講座プログラムの制作については、アンケート調査を実施した各学校の教員を一同に招いて検討会を実施する予定であったが、それぞれの学校行事等で日程を絞ることが困難であったため、こちらから各学校に出向いて意見交換する方法に修正した。これには時間を要し、現在時点で意見交換ができたのは6校であり、30年度に継続となっている。また、出前講座でのICT学習ツールについてはiPhoneを利用したものを考えていたが、教員との意見交換で効果的な教材になりにくいと判断するに至り、その点を再検討するのに若干時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
特別支援学校の教員との意見交換を継続し、校種別の博物館出前講座プログラム、およびICTツールを中心とした体験型学習教材を完成させ、特別支援学校への博物館出前講座を実践する。教員へのアンケート調査では知的特別支援学校の博物館利用の疎外が顕著であることが把握できた。したがって、知的障害の児童生徒に向けたプログラムの必要性がとりわけ高いと考えられるため、その実践を軸に置いて取り組む。出前講座プログラムは、実施ごとに教員と児童生徒への聞き取りやアンケート調査で評価をおこない、随時検討・修正して進める。 出前講座の実践検討は、各講座に和洋女子大学学芸員養成課程の履修学生の参加を求めて実施する予定であった。ところが、本研究申請者が和洋女子大学から明治大学に異動したため、明治大学の学芸員養成課程の学生を新たに取り込み、29年度から本研究に協力している和洋女子大学の学生も含めて、博物館出前講座の実践チームを作る。このチームには和洋女子大学学芸員養成課程の担当教員に研究協力者として参加してもらうよう、了解を得てある。出前講座ではこれらの学生に実地体験学習の機会を提供するとともに、講座での児童生徒の学習効果を高めるために、チームティーチングの態勢を作って取り組んでいく。 また、特別支援学校教育のニーズに対し、当該地域の博物館における対応の現状について、実地と聞き取りの調査を継続する。30年度にはこの結果をまとめてデータベースを完成させ、現状の分析と考察をおこなう。
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Causes of Carryover |
特別支援学校への出前講座に用いるICT学習ツールとして、当初はiPhoneを利用したものを考えていたが、教員との意見交換で効果的な教材になりにくいと判断し、その再検討に時間を要した。そのため、これにかかわるe-ラーニングコンテンツ制作用の機器とソフト、および制作にかかわる謝金の一部が未支出となった。30年度前半にはコンテンツ内容の検討を終えて制作に着手する見込みが立っており、これに充当する。
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