2019 Fiscal Year Research-status Report
博物館で「自然財」をまもる-哺乳類標本の作製技術・情報管理の体系化と継承-
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17K01219
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Research Institution | Kanagawa Prefectural Museum of Natural History |
Principal Investigator |
広谷 浩子 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (10205099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 ゆき 神奈川県立生命の星・地球博物館, 学芸部, 主任学芸員 (70342946)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自然史資料 / 鳥獣標本 / 作製マニュアル / 地域ネットワーク / 標本情報管理 / 技術・情報継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然史標本が次世代にまで受け継がれるべき「自然財」なら、これを取り扱い守っていく人材も適正な形で養成され、情報・技術の継承がなされるべきではないか。このような発想のもと、本研究では、①地域博物館を結ぶネットワークの確立と標本に関する技術情報を体系化すること、②技術情報を継承するための仕組みを開発することを最終目標とした。今年度は以下の2項目の調査・試行を行なった。 ①情報交換会の実施:今年度は、前年度に立ち上げた標本技術情報交換会を2回開催して、ネットワークの定着化をすすめた。この結果を京都で開催されたICOMのポスタープレゼンテーション(Network of Natural History Museums as a Tool for Promoting Research, Collection building, Education and Outreach: Case Studies from Asian Regions)において発表した。研究分担者の加藤は、日本鳥学会2019年度大会において自由集会「第 3 回 収蔵庫は宝の山! ―標本の収集と保存を考える―.」を開催し、博物館施設での標本収蔵や利用の現状について発表し、鳥学関係者と意見交換を行なった。 ②標本作製マニュアルの整備:技術情報交換会開催にあたり、標本作製方法について精査を行ないながら、標本作製マニュアル作りを開始した。マニュアルは紙ベースのものだけでなく、動画を取り入れることも検討してきた。年度末には、標本作製の技術情報の継承者養成の第一歩として、学生等が対象の標本作製勉強会の開催の準備を進めてきたが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、中止となってしまった。準備の過程で、標本作製に関心をもつ若い世代がいることも明らかになったので、今後は新しい形の勉強会も視野に入れながら準備を進めたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究代表者・分担者と情報交換会企画グループのメンバーは、打ち合わせや技術情報交換会のプレ勉強会を通じて、研究全体を推進する力を持つに至っている。技術情報交換会に際して発行されるニュースレターやMLによる情報提供の効果もあって、県内のいくつかの施設に標本作製や活用を積極的に取り組もうとする機運がうまれてきたと考える。 しかし、一方、技術・情報を継承するためのしくみであるマニュアル作りや人材育成については、なかなか具体的な成果をあげにくくなっている。2019年度は他館への視察等も十分には行えず、情報収集はメールなどに限定されてしまった。 特に、新型コロナウイルの影響で、活動自粛の影響は非常に大きく、これまでの研究のある部分については、方向性を変える必要が生じてきた。この立て直しのために、今後も時間が必要になると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、新型コロナウイルスの影響により研究協力施設間の人的交流ができなかったため、研究自体の遅滞があり、実質的な研究は7月スタートとなる。7月以降の研究期間を、3つに区切り3か月ごとの見直しを行ないながら調査を遂行する。 1期では、技術情報の継承に力点を置き、標本作製管理マニュアル作りを重点的に行う。2020年度になってから、これまでの活動過程をポスターにまとめ、札幌市円山動物園で開催された「ホネホネちょびっとin北海道2020」に、他地域の活動グループとともにポスター展示に参加したが、この展示を巡回展示として県内の複数施設で公開して標本作製管理の重要性を広報する。2期では、人材育成を目標とした学生むけ勉強会の開催を目指す。従来の対面式講座だけでなく、オンライン講座や動画の限定配信などの可能性も探りながら準備する。3期では、1・2期の研究成果をまとめ、技術情報交換会や他施設視察なども可能なかぎり実行する。当初めざした「自然史標本の作製と保管の技術情報の体系化」が年度末までに達成できる可能性は低くなってきたため、研究期間の延長も視野に入れながら、進めていきたい。
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Causes of Carryover |
2019年度は神奈川県内の施設間ネットワークの活動を特に重点的に行ったため、当初予定していた他館への出張調査や海外博物館への調査が予定通りできなかった。このため、旅費の執行が少なくなっている。また、今年度も標本作製と保管のための新たな環境整備・技術習得に研究費を使い、技術情報交換会で十分に活用することができた。ここで整備した環境は、次年度でも継続して使用できるものである。 1期では、技術情報継承のために、標本作製マニュアル作成と標本作製保管活動を紹介するポスター巡回展をおこなう。このための印刷費用・動画記録配信用ウェブカメラ・展示用什器などを用意する予定である。2期では、標本作製の技術講習会を地球博物館以外で開催運営する。このための謝金使用を予定している。3期では、研究課題のまとめを行うとともに、県外施設や海外博物館の視察調査(研究代表者・分担者)もおこない旅費を使用する予定だが、国内外の出張については新型コロナウィルスの感染状況など予測不能な部分も多い。場合によっては、研究期間の延長も想定しながら、慎重に準備を進めたい。
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Research Products
(3 results)