2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K01222
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
初澤 敏生 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10211476)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 東日本大震災 / 産業 / 復興 / 防災教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は福島県を中心として被災地域の自治体・商工会議所等と連携して商工業実態調査を行った。具体的には南相馬市(商工業)、福島市(商工業)、喜多方市(製造業)である。これらの調査については集計・分析を行い、地域の振興策などについても提言を行った。今後は地域間の比較検討を進める予定である。なお、南相馬市での調査については前年度も実施しており、その成果は本年度の経済地理学会において報告するとともに、日本地域経済学会の機関誌である「地域経済学研究」に投稿し、掲載予定となっている。熊本地域に関しては、帝国データバンクからデータを購入し、分析を進めている。 これらの調査の分析から、被災地では宿泊業が特徴ある動きを示していることが把握できた。特に福島市のホテル等の調査においては、宿泊業の形態によって売上等の動向が大きく異なっている。この結果は宿泊統計や入込客統計だけでは把握できないものであり、日本観光研究学会東北支部大会において、その速報を報告した。来年度においては、データをそろえて分析を深めていく。 また、今年度は前年度までに行ってきた被災地での特徴ある教育や防災教育に関しても業績をとりまとめた。日本社会科教育学会編『社会科教育と災害・防災学習-東日本大震災に社会科はどう向き合うか-』(明石書店刊)において、防災教育の目的と構成、福島県の動向などについて論じた。また、日本生活科・総合的学習教育学会において被災地で行われている「ふるさと学習」の特徴と問題点について報告を行った。 この他、原発事故に伴う避難者の動向について、国内外の研究者を招いて研究会を開催し、討議を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災被災地の産業復興に関しては、これまでの蓄積もあり、順調に調査が進んでいる。今年度においては、計画を上回るレベルのデータが入手できた。また、熊本地震被災地においてもデータが入手できたことから、今後の計画進捗の見通しが立った。来年度以降の調査・データ入手についても既に一定の見通しが立っており、計画の順調な進展が期待できる状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に関しては、2019年度に東日本大震災被災地の産業復興について、まとめに取りかかる予定である。既に震災後のデータは一定程度整っており、震災前から経時的に、また、製造業・建設業・小売業・サービス業などを産業別だけでなく俯瞰的にとらえ、分析を進める。これと並行して熊本地震被災地域の製造業を対象として主に取引構造の変化から震災後の地域製造業の特徴を把握・分析する。 また、今年度の調査から明らかになった宿泊業の特徴について、調査を広げて分析を深めていきたい。宿泊業は観光業を支える重要な産業であり、東京オリンピックの開催を前にして、被災地の復興を牽引することが期待されている。しかし、地域宿泊業の実態分析は遅れており、被災地ツーリズムの拡大に貢献できるような研究としたい。
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Causes of Carryover |
本研究を進めるにあたり必要なデータが、自分で調査するよりも帝国データバンクから比較的安価に購入できることがわかり、2019年度にデータ購入を行うこととした。それにあたり一定額をストックする必要があったため、一定額を繰り越した。繰越額は19年度前半の内にデータ購入に使用し、年度内の研究に役立てる予定である。
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