2021 Fiscal Year Annual Research Report
Geographical study on industrial revival in the disaster area
Project/Area Number |
17K01222
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
初澤 敏生 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10211476)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 産業復興 / 東日本大震災 / 風評 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、災害被災地域における産業復興の動向と、その有効な振興策について実証的に明らかにすることを目的としている。 これにあたり、福島県の農水産業の風評被害の検討を取り上げた。報告者は福島県産農水産物の価格動向を分析し、価格低下の背景として「ブランドの崩壊」が存在しているのではないかと考えた。これを改善するためのブランド形成の方法について、国内の他産地の事例を分析、消費者に見える形で価値が認識できるような商品の生産が必要であることを示した。 製造業及び建設業の復興に関しては、福島県内の各自治体を事例として研究を積み重ねた。製造業では震災以前の取引が減少したことが影響し、売り上げの回復が遅れていること、震災後の従業員の質的な低下が著しく、それが事業の拡大の障害となっていることなどを明らかにした。建設業では官公需の比率が高く、その発注の動向によって地域産業の状況が大きく変化している。 小売業・サービス業の復興には、地域人口の回復が必要であるが、旧避難地域を商圏とする地域においては人口が依然として回復せず、売り上げの低下が続いている。また、パート労働力が大幅に減少したため、正社員を増員して対応しているが、賃金の上昇などもあり、経営を圧迫している。 観光業に関しては、福島県の宿泊業と福島県を着地とする教育旅行について検討を加えた。東日本大震災後、福島県への入込は大幅に減少した。ただし、復興需要もあり、観光を種とする旅館が低迷する一方、ビジネスホテルは比較的好調を維持した。入込は、その後徐々に回復したが、Covid-19の流行は、その動向を大きく変化させた。Covid-19の流行により、教育旅行の県域は大幅に縮小された。この結果、南東北及び北関東の各学校が福島県を教育旅行の行き先に再設定し、入込が大幅に増加することになった。新しい災禍が風評を上書きしたとも言える。
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