2018 Fiscal Year Research-status Report
日本の夏の気候を規定するチベット・オホーツク海高気圧の形成機構
Project/Area Number |
17K01223
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
植田 宏昭 筑波大学, 生命環境系, 教授 (70344869)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高谷 祐平 気象庁気象研究所, 気候研究部, 主任研究官 (30782289)
立花 義裕 三重大学, 生物資源学研究科, 教授 (10276785)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 季節予報 / 台風 / オホーツク海高気圧 / チベット高気圧 / アジアモンスーン / 太平高気圧 / エルニーニョ / ラニーニャ |
Outline of Annual Research Achievements |
チベット高気圧、およびオホーツク海高気圧の形成機構および年々変動を引き起こす物理プロセスについて、大気客観解析データに基づく診断解析、および気象庁の気候モデルを用いた海面水温緩和実験、さらに線形傾圧モデルによる熱源応答実験を行った。オホーツク海高気圧については、出現前の梅雨前線の降水活動に着目し、梅雨前線がOHの形成に及ぼす影響を調べた。OHの出現前に梅雨前線の降水活動が活発である時、梅雨前線の対流活動に起因するテレコネクションが確認され、OHの形成に寄与している可能性が示唆された。また順圧的な構造は、梅雨前線を起点とする大気の定在ロスビー応答とも矛盾していないことが確認された。 モンスーン気候に内在するこれらの高気圧および連動して変動する降水・台風活動について、季節予報の観点から調査を行った。具体的には、過去に生じたエルニーニョ現象(1988, 1998, 2010年)を抽出し、エルニーニョ現象が衰退し始める12月から翌年の11月にかけて、観測された海面水温、大気循環場、降水量、台風発生数について調査を行うとともに、気候モデル実験データセット(d4PDF)における台風の発生頻度を調査した。熱帯太平洋のエルニーニョと、それに連動して変動するインド洋の海水温との複合影響により、台風の発生数は、エルニーニョのピーク後の春から秋にかけて熱帯太平洋上で減少する一方で、夏の後半から秋には南シナ海を中心に増加に転じることを明らかにした。これらの成果は、日本気象学会の国際誌「Journal of the Meteorological Japan」および同機関紙「天気」に掲載された。ジャガイモの生育不良による「ポテチショック」を引き起こした2016年の天候不良の遠因の特定に至ったことを受け、成果の概要については、筑波大学広報課を通してプレスリリースの形でアウトリーチを行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
太平洋高気圧、チベット高気圧、オホーツク海高気圧の形成とそれらが引き起こすモンスーン気候の変動特性について、客観解析データに基づく診断解析行うとともに、線形傾圧モデルや全球気候モデルを用いた海面水温緩和実験を実施し、定性的かつ定量的な物理過程の解明に向けて順調に研究を遂行している。研究結果の一部は、日本気象学会専門誌「気象集誌」、「天気」に受理されている。研究代表者、分担者らは、H30年度に複数回の研究打ち合わせを行うとともに、平成31年3月22日~23日に三重大学において開催した研究成果報告会では、筑波大、三重大、 気象研、さらに関連する研究所(気象研究所)および大学(新潟大学、京都産業大学)の研究者が一堂に集い、研究成果の検討を行うとともに、H31年度以降の研究計画を議論した。 高谷はインド洋海面水温(SST)の年々変動による夏季アジアモンスーンに対する影響を評価するため、インド洋SSTの感度実験を行った。解析の結果、インド洋SSTの年々変動は、インド洋から北西太平洋域の降水変動、および、それに影響されるアジアモンスーン循環、チベット高気圧等に大きな影響があることが分かった。特に北西太平洋モンスーン指数では、インド洋SSTの年々変動が、予測可能な(SSTに規定される)年々変動成分の約2/3程度を説明することが新たに分かった。これらの研究結果について平成30年の日本気象学会秋季大会においてポスター発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
H31年度はオホーツク海高気圧の季節的な発現と年々の変動について、立花らが得た結果を論文化する。また、植田・高谷が協力し、H30年度に高谷が開発した海面水温緩和実験の手法を海盆間相互作用の評価研究へ応用する。チベット高気圧については、熱源と背景風の季節変化の観点から、線形傾圧モデルを用いた熱源応答実験を通して、チベット高気圧に伴う対流圏上層の高温域(UTTM)の形成要因を明らかにする。得られた結果については、秋の気象学会やIUGG等などでの発表を通して多くのコメントを貰いつつ、成果を論文として集約する。 高谷は、夏季北西太平洋の循環について、インド洋や太平洋赤道域(エルニーニョ-南方振動: ENSO)のみならず、北太平洋熱帯域の太平洋南北モード(PMM)からも影響を受けていることを念頭に、SST感度実験を北太平洋熱帯域に対して行い、2018年の夏季にはPMMが北西太平洋モンスーンを強化し、北西太平洋域の活発な台風活動をもたらしていたことを確認する予定である。
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Causes of Carryover |
海外での発表を行わなかったことにより、当初の使用見込み額より支出額が下回った。平成31年度はIUGG(カナダ)での発表や現地調査、研究支援に係る短期雇用等に支弁する予定である。
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[Journal Article] Tropical rainfall predictions from multiple seasonal forecast systems.2019
Author(s)
Michel Dequ, Tina Dippe, Nick Dunstone, David Fereday, Richard G. Gudgel, Richard J. Greatbatch, Leon Hermanson,Yukiko Imada, Shipra Jain, Arun Kumar, Craig MacLachlan, William Merryfield, Wolfgang A. Muller, Hong‐Li Ren, Doug Smith, Yuhei Takaya, Gabriel Vecchi, Xiaosong Yang
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Journal Title
International Journal of Climatology
Volume: 39
Pages: 974-988
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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