2017 Fiscal Year Research-status Report
Assessment of the liquefaction vulnerability caused by the artificial land modification
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17K01224
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
青山 雅史 群馬大学, 教育学部, 准教授 (30724744)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 液状化 / 史料 / 河道変遷 / 砂利採取場跡地 / 熊本平野 / 鬼怒川・小貝川低地 / 2016年熊本地震 / 2011年東北地方太平洋沖地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年熊本地震により、熊本市南区の近見町から元三町にかけて南北にのびる自然堤防上の幅100m以内の細長い(帯状の)領域において、液状化被害が集中的に発生した。この「液状化の帯」の土地条件、土地履歴を明らかにすることを目的として、中世以降の文書の記述内容、絵図や地形図の描画内容などを吟味したうえで、この地域の土地条件の変遷を検討した。本研究で用いた史料は、熊本県立図書館や熊本市歴史文書資料室などが所蔵・公開している中世から近世にかけての文書や江戸期の絵図、伊能図、明治期以降の迅速測図や地形図などである。その結果、江戸期以降の絵図、伊能図や明治期以降の迅速測図、地形図には「液状化の帯」に該当する領域に河川の存在は認められず、白川河道は現在とほぼ同位置にあったこと、「液状化の帯」の南端付近に位置する寺院に残された13世紀後期の文書(大慈寺文書)には同市南区川尻付近を白川が南流し、白川と緑川が合流していたとする記述があることから、13世紀後半には白川が「液状化の帯」に該当する領域を流下していた可能性があること、江戸初期の史料から、江戸時代初期には「液状化の帯」に該当する領域に小規模な河川(白川旧河道)が存在し、その小河川は明治期までに消失(陸化)していたこと、などが示された。 また、2011年東北地方太平洋沖地震において、鬼怒川・小貝川低地では多数の地点で液状化が発生したことが既存研究において指摘され、それらは後背湿地や旧河道などにおける液状化発生とみなされてきた。それらの液状化発生地点の土地条件について、多時期の迅速測図、旧版地形図や空中写真などの地理空間情報を用いて再検討したところ、おもに1960年代以降に砂利採掘履歴を有し、そのようなかつての砂利採取場を埋め戻した領域(砂利採取場跡地)において液状化が多発していたことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年熊本地震において液状化被害が集中的に発生した領域(液状化の帯)の土地条件について、既存研究において白川河道の変遷との関係が議論され、この「液状化の帯」に該当する領域をかつての白川が流下していたことが指摘されてきた。しかし、それを示す具体的証拠を欠いており、詳細は不明であった。本研究では、古文書、絵図、迅速測図や旧版地形図など、おもに歴史史料を用いることによって、これまで不明な点が多く残されていた「液状化の帯」と白川河道の変遷との関係について、新たな知見を得ることができた。とくに、江戸時代初期における「液状化の帯」の土地条件について、この領域にかつて白川が流下していた名残りと思われる小河川の存在が示唆されたことは、「液状化の帯」の発生要因を検討するうえで重要なことである。 2011年東北地方太平洋沖地震による鬼怒川・小貝川低地における液状化発生地点の土地条件について、既存研究ではその多くが後背湿地や旧河道における液状化発生とみなしていたが、1960年代以降に造成された砂利採取場を埋め戻した領域において液状化が多発していたことを見出した。これは、多くの既存研究にはない新たな知見である。 以上のことから、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.2016年熊本地震「液状化の帯」における土地履歴について、史料調査をさらに進め、本地域における人為的土地改変と液状化の発生との関係を明らかにしていく。また、熊本地震の液状化発生のタイミング(4月14日M6.5「前震」または4月16日M7.3「本震」)とその空間分布について、現地での聞き取り調査を進め、SAR(合成開口レーダー)干渉画像から得られているデータを組み合わせることにより、調査を進展させていく予定である。 2.2011年東北地方太平洋沖地震におけるおもに内陸部の液状化発生地点の土地条件について再検討を進め、とくに砂利採掘などの人為的土地改変と液状化発生との関係について、多時期の地理空間情報を用いたGISによる検討や表層地盤のデータなどを用いた検討に加え、現地での土地利用変化に関する聞き取り調査などを実施し、本研究を進めていく予定である。 3.都市部の沖積平野における砂利や砂鉄などの採掘跡地の分布について、多時期の地理空間情報を用いたGISでの解析、現地での土地利用変化に関する聞き取り調査、自治体が有する文書に関する調査をおこなうことで明らかにし、それらの領域の表層地盤や採掘跡地埋め戻し材料、地下水位などのデータ収集をおこなったうえ、液状化危険度の高い領域の抽出を進めたい。 以上の調査研究を実施し、学会等での発表をおこない、学会誌や商業誌等で研究成果の公表を迅速に行う予定である。
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Causes of Carryover |
2016年熊本地震液状化発生地点の土地履歴に関する史料調査を優先的に進めた結果、液状化発生地点の土地履歴に関する現地調査の実施日数が予定していた日数よりも少なくなったことによる。「次年度使用額」は、翌年度分として請求した助成金と合わせ、液状化発生地点の土地履歴に関する現地調査に優先的に使用する予定である。
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