2018 Fiscal Year Research-status Report
価格プロモーションのための動的消費者購買行動モデル:リアルオプション・アプローチ
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17K01242
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 広人 北海道大学, 経済学研究院, 助教 (10434375)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 允 北海道大学, 経済学研究院, 准教授 (30434286)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マーケティング / 消費者購買行動 / 動学的離散選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度に開発した新たなパラメータ推定法と,平成30年度に購入した米国の購買履歴データから炭酸飲料のデータを抽出し,実証を行った.炭酸飲料を選択した理由としては,買い置き可能な製品であり,価格変動を考慮した購買タイミングの動学的な意思決定がなされると考えられるためである.その結果,以下のことが分かった.まず,実データを用いた場合においても,開発したパラメータ推定法は安定的なパラメータ推定が可能であることが分かった.ただし,実データとのフィッティングにおいて改善すべき課題が発見された. 改善すべき課題としては,各家計の消費量は一定ではなくバラツキを有することから,その在庫量もバラツキを有する.したがって当該バラツキを考慮することで,実データとのフィッティングを改善可能となる.そこで,炭酸飲料の特徴を考慮して消費量のモデル化を行った.その特徴とは,炭酸飲料は開封後長期保存ができないことから,家庭内在庫から消費するために選択した容器サイズの炭酸飲料を短期間で消費することである.これは消費量が容器サイズの離散選択モデルで表現可能であることを意味し,消費量における消費者の異質性を考慮することに繋がる.上記の課題については,モデル構築の上,数値実験により消費量を表現可能であることを,以下の学会において報告している.
Susume IMAI, Yuta KIKUCHI, Hiroto SUZUKI: "A Dynamic Model of Consumer Behavior - Purchase, Consumption and Inventories-", The 19th Asia Pacific Industrial Engineering and Management Systems ,(2018(December))
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
以下の2点の理由により,進捗状況はやや遅れている.1つ目は,購買履歴データの入手についてである.平成29年度に入手を予定していたデータが提供を中止してしまったことから,代替となるデータを入手することに時間を要した.ただし,この点については平成30年度(8月)に代替となるデータを入手することができ,解決済みである.2つ目は,研究実績の概要に示した課題が発見されたことである.ただし,当該遅延理由については,新たな家庭内在庫モデルの提案に繋がっている.従来,家庭内在庫量を扱う研究においては,消費量を一定といった強い仮定が置かれている.これに対し,炭酸飲料の特徴を考慮することによって,消費量を離散選択モデルで表現可能であり,仮定を緩和した柔軟なモデル,さらには動学的離散選択モデルにおける消費者の異質性を考慮した新たなモデルの提案に繋がっている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は,消費量を離散選択モデルで表現した消費者購買行動の動学的離散選択モデルの実証を行う.平成30年度に開発した動学的離散モデルでは,消費者の異質性を家庭内在庫といった側面から考慮し,動学的モデルとすることで価格の相対評価を考慮可能なモデルとなっている.実証における今後の課題としては,以下の2点が挙げられる.まず1つ目は,分析対象とするカテゴリの選定である.炭酸飲料はブランド,容器サイズ,パッケージ(複数本のパック)等,多種多様な製品構成となっていることから,将来の効用を導出する際にその組み合わせ数が膨大となり,計算時間の問題から考慮可能な消費者の異質性が少なくなってしまうといった問題がある.ただしこの点については,パスタソースのデータを用いることにより,組み合わせ数が大幅に削減可能であることが分かっていることから,解決可能であると考えている.またパスタソースにおいても,開封後は長期保存が不可であり,炭酸飲料と同様の消費者のモデル化が可能であることも分かっている.2つ目は,推定時間が高速な言語でのプログラミングである.パスタソースを用いた場合においても,動学的離散選択モデルの推定には,多大な時間を要することが分かっている.平成30年度に高性能なPCを購入済みであるが,より高速な推定を可能とする言語でのプログラミングが必要となる.現在はfortranでのプログラミングを予定しており,これにより従来と比較して数倍の速度で計算可能となる予定である.
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Causes of Carryover |
平成30年度には、データを用いた実証段階において課題が発見されたことから、参加を予定していた国際学会への参加を延期することとなった。そのため、次年度使用額が発生することとなっている。 ただし、平成31年度はこれまでの成果を複数の国際学会で発表し、有益なコメントを得ることを予定している。
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Research Products
(1 results)