2019 Fiscal Year Research-status Report
フリーGISデータを活用した沿道密度分析ツールボックスの開発と提供
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17K01252
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥貫 圭一 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (90272369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 俊明 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 特任准教授 (50567146)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 沿道 / ボロノイ / 世帯 / ドローネ / 隣接関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,社会システム工学でしばしば考えられてきた人口や建物の密度を,新たに道路ネットワーク上の密度(沿道密度)としてGIS上で扱うための方法を追究し,その実践のためのソフトウェアツールボックスを開発することを目指している。とくに近年は,ビッグデータやオープンデータの流れの中で,市民が入手しやすくかつ自由に活用できる地理空間情報が活発に整備・提供されつつある。そうした社会的背景を踏まえて,本研究では,フリーGISデータの活用を視野に入れつつ,ソフトウェアツールボックスの開発を目指している。 平成31(令和元)年度は,前年度までに課題として残されていた開発ツールの例外処理について改善した。従来は,入力する道路ネットワークデータに例外的エラーがあると,その時点でツールが停止していたが,これを克服することができた。また派生的に新たなツールとして,ふたつのネットワークデータが与えられたとき,それらの類似度を評価するツールを開発した。さらに,そうした開発ツールを,実際の都市における問題へ応用することを試みた。具体的には,道路ネットワークのリンクに着目し,ボロノイ分割の考え方に従って,沿道勢力圏としての沿道近傍領域を画定し,沿道の世帯数を推定した。また,洪水ハザードマップを題材に,水害避難時に,どの部分の道路からどの程度の避難者が発生し得るかを推定することを試みた。これらはいずれも沿道領域というミクロな領域に着目して,地域のデータを集計・推定する新しい手法とその応用の提案であり,この提案手法が多くの地域で採用されてくれば,今後の地域社会で有効性が理解されるのではと期待している。さらに,沿道とは別に,建物の隣接関係に着目した分析への応用も試み,都市における個々の建物がいかに隣接しているかを評価する研究を行った。これらの成果は,論文などにまとめて学術誌へ投稿した他,国内の学会で公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分析ソフトウェアの実装について,計画していた水準を達成できている。また,その応用例の蓄積においても,おおよそ成果が得られている。ただし,ここでの研究の意義について,都市を扱う研究者へのアピールが不足していると感じており,これまでの成果を今後も学会などで公表したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度までに,開発ツールボックスを洗練させる目標と,その実際の応用の目標との両面で,おおよそ目標水準を達成できた。一方で,この研究課題の意義が,関連する研究分野とくに都市計画などの分野の研究者に,まだまだ理解されていないと実感しており,これまでの成果を学会などで発表することで,意義をアピールしていければと考えている。
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Causes of Carryover |
ここまで報告した通り,研究の目標水準はおおよそ達成できているものの,関連する研究分野の研究者たちへ,本研究の意義を理解してもらうためのアピールについては,まだ余地があると感じている。年度の後半で得られた成果が多いため,それらを次年度に整理した上で,学会発表などで本研究の成果を発表していく予定である。
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