2018 Fiscal Year Research-status Report
住民セグメンテーションに基づく災害リスクコミュニケーション施策の構築
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17K01257
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
吉田 護 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (60539550)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | リスクコミュニケーション / 地域防災 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、個人及び地域の備えに関するセグメンテーションに関する分析を行った。この分析結果は2本の学術論文として今年度掲載された。研究成果は,1)避難の備えは脅威評価ではなく対処評価の認知の改善によって促進されうること,2)避難の備えの実施によって避難行動の自己効力感が高まり、それが避難意図の醸成につながりうること,3)市町村による避難勧告や避難指示だけでなく,近隣住民や上流に住む友人からの勧めも避難行動の重要なきっかけとなりうること,4)自治体による避難勧告や避難指示に対しては行政情報への信頼を向上させること,近隣住民による勧めに対しては近隣住民とのお付き合いや地域意識を向上させること、上流に住む友人からの勧めに対しては河川流域住民の地域防災意識を向上させることが、それぞれの情報に対する避難意図の形成につながりうること,の四点にまとめられる. なお、避難の備えと避難意図の関係性について、a)避難動機の高さが避難の備えを促す因果関係,b)避難の備えが避難意図の自己効力感を高め、避難意図の形成につながる因果関係、の二つの検証仮説をおいたが支持された仮説は後者であった.また,避難の備えは、避難行動の自己効力感だけでなく、コスト認知を改善させる効果があることも確認された.さらに、避難行動については、市町村による避難勧告や避難指示では避難しようと考えているが近所からの勧めでは避難しようと考えていない住民やその逆の住民がいることも明らかにした。この結果は、住民セグメンテーションを通じたリスクコミュニケーションの必要性を支持する結果であり、概ね当初の想定通りの結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は「地域の備えに関する質問紙調査の実施と住民セグメンテーション」を行う予定であったが、地域との関わりによって避難のきっかけとなる情報源が異なり、住民によって改善すべき認知が異なること,が示された。この結果は住民セグメンテーションの必要性を支持する結果であり、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進展しているが、平成30年度内の計画で想定していた、減災行動に関する"同調行動"や"集団極化"を支持する分析結果は得られなかった。この点は仮説の見直しが迫られたため、その追加的な分析は今後行う予定である。 その上で、これまでは個人や地域の備えと関連が深い認知的要因の解明に取り組んできたが、今後は当初の予定通り、これまで得られた知見に基づいて、その認知的要因の改善に資する情報(e.g.リーフレット等)を作成し、行動変化に対する有効性を検証する。
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