2017 Fiscal Year Research-status Report
Financial risk management with integration of multi-cuve models and XVA
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17K01261
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
田中 敬一 首都大学東京, 社会科学研究科, 教授 (00381442)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | レジームスイッチ / 金利期間構造モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、金利変動が従う確率微分方程式がレジームスイッチにより異なる確率微分方程式に変化する状況下での債券価格の導出を行った。具体的には短期金利(short rate)がVasicekモデルやCIRモデルに従う場合などについて、債券価格の数値計算を行った。レジームスイッチの特性のため、債券価格を解析的に表現することはできないが、多重積分表示の級数和として表現できた。レジームスイッチ導入によって直面する困難な部分は、解くべき方程式が多次元であることと行列の非可換性である。それをある程度回避するため、その展開にはホモトピー摂動原理(homotopy perturbation method)を用いている。ホモトピー摂動原理による展開式における第n項の値は、計算期間内のレジームスイッチ(格付変更)がn回起きる場合の値に相当すると解釈できることがわかった。格付変更の蓋然性の大小を含む各種パラメータの設定により、様々な特性を持つイールドカーブを導出したことは意義深い。レジームスイッチを格付の変化と捉えれば、格付が変化しない期間では金利変動が従う確率微分方程式は不変であるが、格付の変更によってその金利変動が従う確率微分方程式が別の形に変化する状況を表すこととなる。そのためマルチカーブモデルにレジームスイッチを導入すればFVAなどの解析に適用できると見込める。展開式における第n項の値の解釈に基づき、格付変更の頻度が高くない場合には、最初の数項で十分な近似である。その一方で、積分計算は多重積分であるため、その数値計算の負荷は低くなく、効率的な計算が今後の課題のひとつとなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
レジームスイッチを含むシングルカーブモデルの計算は基本的には終えているが、マルチカーブモデルへの拡張には時間を要している。そのため当初の平成29年度の目標であったFVAの解析には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
マルチカーブモデルにレジームスイッチングを導入した債券価格の導出を行い、FVAの評価を目指す。格付の変更はレジームスイッチングで表現されるので、レジームスイッチングを導入したモデルにより、格付の変化の可能性とXVAの関係が成かとなる。更に、取引の相手方に倒産の可能性がある場合のスワップ取引の評価に進み、DVAについて考察する。これらの具体的な数値計算については、ホモトピー摂動原理による積分計算を行うことを想定している。
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Causes of Carryover |
概ね予算どおり支出したが、僅かな残金が生じた。その支出に値する使途はなかったので次年度に合算して利用することとした。
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