2017 Fiscal Year Research-status Report
人間とロボットの共創作業を考慮したベイズ学習機能付動的ラインセル混成生産システム
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17K01279
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
片岡 隆之 近畿大学, 工学部, 准教授 (40411649)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ラインセル混成生産 / 人間とロボット / ベイズ学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度に実施した研究の成果については,研究計画調書に記載した「研究計画」のとおり,以下の点について研究を進めることができた.本年度は,本研究対象である人間とロボットの共創作業に内在する共創パラメータの設定/分類とその抽出法の調査研究に注力した. S1: フィールド調査に基づく各種管理方式における共創パラメータの設定/分類調査 本研究が想定する小型ロボットは,人間が並ぶ生産ラインに入り込み,人間との多期間に渡る共創作業を通じて学習し習熟するほか,人間と人間との作業とは異なるパラメータが人間とロボットの共創作業時に発生することが過去のヒアリング調査から判明している.そこで初年度は,国内の経営工学分野の諸学会において,各種管理方式における人間とロボットが共創するフィールドを調査研究することにより,数理モデル化に必要な共創パラメータの設定/分類及びその抽出法の選定を試みた.サービスロボット導入に関する考察として,RPAにおけるSOSとSDSの分類方法が,共創作業の学習分類に大きな参考となるほか,特に従来モデルは人間が決めたアルゴリズム(知識)で入力を加工し出力する一方,機械学習は学習データから入力に近いデータを選び統計的に判断したものを出力しており,特徴量(説明変数)の分類に注力が必要と判明した. S2: 共創パラメータの対話型生産システムへのビルトインとベイズ学習モデルの確立(一部実施) パラメータ設定/分類に向けたモデル検証では,正解率,適合率,再現率,F-Measureの4指標を利用した.その結果,モデルデータにおいては,代替推定法やホールドアウト検証法ではなく,k-分割交差検証法が良い値を示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年の技能技術伝承関連研究分野では,ロボット工学の分野で,3D画像と人工知能(AI)を駆使した“技能系”での自律学習型ロボットに関する研究が中心となっており,“管理技術系”での熟練技術者による管理技術ノウハウに関するモデリング研究は,未だ具体的事例が散見される程度でしかない.そこで本研究では,近年,確率推論の一つとして注目を浴びているベイズ学習機能を応用することにより,近未来の作業現場で主流となる人間とロボットの共創作業(協働生産ライン問題)を含む複雑な作業編成に対し,不確実な需要変動に対するロバスト性を評価しつつ,ライン/セル混成の機動的な対応が可能な人間とロボットの共創作業を考慮したベイズ学習機能付動的ラインセル混成生産システムを開発し,近未来中小企業の管理技術力維持向上を目指している.特に本年度の研究では,「研究目的」に記載された以下の研究課題に取り組み,次の成果を出すことができた. (目標1) 人間とロボットの共創作業に内在する共創パラメータの設定/分類とその抽出法 モデル検証では,正解率(目的変数の推論結果と検証データを照合し正解したデータの割合),適合率(推論により対象状態と予測されたデータのうち検証データと一致したデータの割合),再現率(検証データで対象状態であるデータのうち推定値と一致したデータの割合),F-Measure(適合率と再現率の調和平均)の4指標を利用した.その結果,モデルデータにおける代替推定法では,正解率96.3%と良い結果を得られたが,ホールドアウト検証法では,正解率67.21%まで低下した.ホールドアウト検証法は,学習に使用したデータとは別のデータを使用して検証することから,本モデルでは未知(学習に使用していない)データに対する予測精度が良くないことが分かった.そこで,本研究では,k-分割交差検証法を適用することとした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はほぼ計画通りの研究成果が出ているため,平成30年度は当初計画の通り,以下の内容について研究を進めていく. 1: 共創パラメータの対話型生産システムビルトインとベイズ学習モデル確立 研究計画調書のS1に基づく分類・抽出に関し,環境要因(例:バッファの有/無)・作業プロセス(例:シングル/パラレル)・定量評価値(例:作業時間/作業者数)に基づく新たな共創パラメータと既存の対話型生産システムを同期化させ,どのレベルの操作者が作業しても,常に動的に入力データをベイジアンネットワークモデルにフィードバックさせることで,表示される次の操作に対する条件付確率が作業者のレベルに適するように,その値を変動させるベイズ学習モデルを新たに検討する. 2: ラインセル混成計画のための新たな検知・調整方式の確立とモデル化 研究計画調書のS2に基づく操作履歴の収集に関し,モデルのベイズ学習機能(有/無)×操作者熟練度(有/無)の違いについて,操作の目的別(例:総作業時間を最小化する場合と総作業者数を最小化する場合)に分けて考察する.さらに,収集した操作履歴を基にベイジアンネットワークモデルを再構築し,確率推論を行うことにより,ベイズ学習機能と熟練技術者の操作の有効性を検証するとともに,その他の操作系統との差を埋めることによって,ベイズ学習機能付きの熟練技術者による操作に近い最終評価値が求められるような操作基準を検討する.
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Causes of Carryover |
(理由) スカイプによるテレビ会議システムや電子メールを用いた打ち合わせの機会を効果的に取り入れることにより,旅費項目の効果的な運用を実行することができたため.また数値実験におけるデータ整理を自ら実施したことにより,人件費・謝金項目を減少させつつ成果を出すことができたため.さらにビッグデータを機械学習させるには,当初計画を上回る高性能PCが必要で,初年度の配分では不足する恐れがあったため. (使用計画) 平成30年度にThe University of Hong Kong (HKU) にて開催予定の大規模な学会 (The 19th Asia Pacific Industrial Engineering and Management Systems (APIEMS 2018)) に新たにエントリーし,成果発表の機会を増やすことにより,研究成果レベルのさらなる向上を図りたい.また平成30年度は,高性能PCの購入により,構築されたモデルに基づく多くのデータ解析・整理業務が発生することが予想されることから,人件費・謝金を用いて効率的な研究の取りまとめを実行していきたい.
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