2017 Fiscal Year Research-status Report
Induction period appearing during the reaction of H2O2/Cu(II)/Cl
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17K01291
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
熊崎 美枝子 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (70358430)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 過酸化水素 / 発熱分解反応 / 圧力発生挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
過酸化水素が遷移金属との接触によって分解が促進されることはかねてより知られているが、本研究では、この過酸化水素の分解反応の中でも、銅(Ⅱ)イオンによる反応が呈する特異性に着目した。反応中に現れる準安定状態や、その準安定状態の消失が起因すると考えられる急激な発熱分解反応、また急激な発熱分解反応に至るまでの誘導期について検討を行うことを目的としている。 銅(Ⅱ)イオンが混入した場合には、呈する反応速度が条件によって大きく異なることが予備的調査からわかっている。H29年度では、温度や濃度,可能性のある中間体の添加等、反応条件を変えながら、反応速度を反映すると考えられる分解生成ガスによる圧力挙動の測定を実施した。その結果、銅(Ⅱ)イオンと塩化物イオンの共存が急激な分解反応に必要であった。このような反応挙動は硝酸銅,硫酸銅では見られなかったうえ、塩化ナトリウムや塩化カリウムなどの金属イオンを変えた場合でも見られなかった。反応終了後に発生したガスを分析したところ、塩素および塩素化合物は検出されなかったことから、塩素は反応中に系外に除去されないことがわかった。したがって、反応速度の変化は反応中の塩素移動ではないところに原因があると考えられる。反応中に発生すると考えられた塩素オキソ酸について検討を行ったところ、次亜塩素酸イオンと亜塩素酸イオンを多く添加した場合、最大測定圧力に到達するまでの時間が長期化することが明らかになった。一方亜塩素酸を添加した場合、凝集物の生成が確認された。また、反応中の溶液の紫外可視分光による分析では、350~500nm付近に反応前後では見られない吸収が見られたことから、検出された化学種が反応機構に何らかの形で寄与している可能性があることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題申請時には、誘導期の発生条件の検討をH29年度に、塩素オキソ酸イオンによる検討をH30年度に実施する計画であったが、実験装置の整備のため、先に塩素オキソ酸イオンによる評価を重点的に実施した。温度などの条件によって反応速度が大きく変わることが本研究課題で対象としている反応の特徴であり、今後の反応機構を検討する上で基盤となることから、信頼性のあるデータの取得に努め、データの再現性が十分確保できるよう実験を繰り返した。
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Strategy for Future Research Activity |
装置の整備が終了したので、H29年度実施予定であった誘導期の発生条件の探索や、反応終了後に残存する化学種の同定を行う。再現性の確保は今後も続けていく予定であるが、初年度と比較して作業になれてきたことから、データ取得作業は迅速化するものと考えている。
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Causes of Carryover |
研究期間内に実施すべき項目の順番を、装置の整備等の理由から入れ替えて実施したことから支出が当初予定額よりも少なくなった。 次年度は外部施設にて行う実験,学会など宿泊を伴う出張等も計画しており、未使用額については次年度研究費と併せて使用する予定である。
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