2017 Fiscal Year Research-status Report
ロケットエンジン燃焼解析手法を活用した液体水素の爆発安全性評価技術の構築
Project/Area Number |
17K01318
|
Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
大門 優 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (90415901)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 圭一郎 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (20446602)
谷 洋海 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (80633784)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 液体水素 / 極低温流体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,液体水素が大量漏洩した際の爆発メカニズムの解明とその予測技術の確立を行う.本研究の試験では相変化・化学反応・衝撃波伝播といった瞬時に発生する複雑な現象であると予測されるため,現象を切り分けることを目的とし2段階の試験を計画した.それぞれの試験は,非反応性の模擬液を利用した「着火前試験」と,水素・酸素の反応性流体を利用した「着火試験」である.本年度は主に,着火前試験の可視化および数値解析手法確立の準備を行った. 「着火前試験」の準備として,①液体空気生成装置の作成と,②液体窒素温度制御装置の作成を行い,両者とも安全な運用が行えることを確認した.また,試験準備が順調であったため,「着火試験」の装置概要についても設計することができた.「着火前試験」の準備状況詳細を以下に記す. 【①液体空気生成装置】液体水素大量漏洩時には,常圧下で20K程度の液体水素によって周囲空気が冷やされることで,液体空気が生成することが考えられる.そこで本現象を再現し,液体空気と水素の予混合状態を生成するための装置を作成した.液体水素を配管に通過させることで周囲空気を冷却することに成功し,液体空気の液滴落下を高速度カメラでとらえた. 【②液体窒素温度制御装置】本研究では,液体空気内に気体空気や気体水素が混じることでキャビテーション崩壊が起きることが着火の要因になっていると推定している.そこで,周囲液体と気体の温度差がキーパラメータとなる.そこで,液体酸素(空気)の代わりに,液体窒素を模擬液として温度制御装置の作成を実施した.液体水素を通した配管を液体窒素に浸すことで,液体窒素の温度を変化させることに成功し,気泡との温度差を計測した. 数値解析手法の改良としては,相変化モデルと圧縮性を考慮した数値解析手法を構築した.検証解析として,ヘプタンを対象とした蒸発解析を実施し,試験と一致することを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は,試験装置の製作までを本年度の目標としていたが,試験装置を運転し安全な試験が実施できることを確認できた.これにより,次年度の早い段階にて,「着火前試験」の気泡崩壊における定量データ取得が可能となった.また,次年度に予定している「着火試験」装置の概要設計まで終了しており,次年度の計画に先行的に着手できている. 本研究においては,極低温流体試験に精通している,宇宙科学研究所の成尾芳博准教授,小林弘明准教授にアドバイスを頂きながら進めている.そのため当初想定よりも進捗しており,また安全に試験を実施することができている.
|
Strategy for Future Research Activity |
年度前半で,「着火前試験」の定量データを取得する.得られた結果は数値解析結果と比較することで,着火前の気泡崩壊について検証するとともに,着火現象に必要と考えられる圧縮波の発生有無を確認することで現象理解を進める.得られた知見により,現在設計を進めている「着火試験」装置を改良し作成する.また、数値解析プログラムには燃焼モデルを導入し,「着火試験」対応解析ができるように改良する.
|
Causes of Carryover |
成尾准教授,小林准教授のご指導により,極めて安全に試験が進行したため,予備のデュワー瓶や配管類を追加購入する必要がなかった.これにより,予算を削減することに成功した.一方で,予備試験により着火に必要な圧縮波の発生を計測することが重要であると分かったため,次年度は圧力計測装置やシュリーレン装置を購入することを計画している.
|