2019 Fiscal Year Research-status Report
ロケットエンジン燃焼解析手法を活用した液体水素の爆発安全性評価技術の構築
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17K01318
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Research Institution | Japan Aerospace EXploration Agency |
Principal Investigator |
大門 優 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 主任研究開発員 (90415901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤本 圭一郎 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (20446602)
谷 洋海 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 研究開発部門, 研究開発員 (80633784)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 液体水素 / 極低温流体 / 着火 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,液体水素が大量漏洩した際の爆発メカニズムの解明とその予測技術の確立を行う.これは,相変化・化学反応・衝撃波伝播といった瞬時に発生する複雑な現象であると予測されるため,現象を切り分けることを目的とし2段階の試験を計画した.それぞれの試験は,非反応性の模擬液を利用した「着火前試験」と,水素・酸素の反応性流体を利用した「着火試験」である.昨年度までは「着火前試験」を中心に,液体酸素内(模擬液として液体窒素や水)で気泡収縮が発生するかについて調査してきた.最も気泡収縮が早かった方法として,液体中を伝播する衝撃波による収縮を選定した.本年度は主に水素/酸素予混合の気泡を液体中に発生させ,衝撃波によって収縮させる「着火試験」の手法の確立を行った.また,可視化については気泡収縮だけでなく着火に関しても高速度カメラにて計測を実施した.通常水素酸素火炎は無色であり可視光を観測できないが,気体に不純物を混ぜることで輝炎を発生させることを試みた.別途水素噴流の着火試験を実施し,本手法の有効性を確認している. 【水を媒質とした衝撃波による着火試験】 可燃性の気泡を衝撃波により収縮させるため,水を電気分解することで得た当量比の水素/酸素ガスを常温の水中に気泡として注入し、上から水面をハンマーでたたくことで水中衝撃波を発生させた.高速度カメラによる可視化により,ハンマーで発生させた水中衝撃波は水素/酸素ガス気泡を収縮させることを確認することはできたが,不着火となった. 【極低温流体の模擬液を媒質とした衝撃波による着火試験】 水の代わりに極低温流体(液体酸素)に物性の近いシリコンオイル(温度は異なるが,粘性・表面張力は近い)を溶質として使用し,同様の衝撃波を利用した「着火試験」を実施した.溶質として水を使用した場合と比較して気泡の収縮速度が速く気泡は小さくなったが,着火を確認することはできなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
着火試験および計測の手法を確立することができた.さらに,極低温流体を模擬する試験も実施できたことで良い進捗は得ている.ただし,着火・不着火を判断するには試験数が足りないと考えれらるため,期間を1年延長し試験を継続することにした.技術的な課題が多いわけではないため,「おおむね順調に進展している」とする.
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Strategy for Future Research Activity |
年度前半で,着火試験の試験数を増やし着火・不着火を判断する.着火・不着火に関わらず,解析によってそのメカニズムを把握する.得られた結果をもとに安全性について検討する.成果は学会で発表し,その後論文化する予定である.
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Causes of Carryover |
本研究は,過去報告されてきた爆発メカニズム仮説を試験によって実証するものであり,着火・不着火を判断するにはある程度の試験数が必要である.2019年度中には試験数を十分とれなかったため,次年度追加試験を実施する.試験における消耗品,旅費(着火試験のため実施できる場所が限られる),学会発表経費として使用する.
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