2019 Fiscal Year Research-status Report
M9超巨大地震の長周期地震動ー観測・計算融合の波動物理に基づく統合モデル構築
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17K01322
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古村 孝志 東京大学, 地震研究所, 教授 (80241404)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 長周期地震動 / 巨大地震 / 深発地震 / 異常震域 |
Outline of Annual Research Achievements |
深発巨大地震による長周期地震動の生成過程を確認するために、2013年5月24日にオホーツク海の深さ610 kmで発生したMw8.3の深発巨大地震における日本列島での観測波形の解析と、地震波伝播シミュレーションを実施した。こうした太平洋プレート内で起きる地震では、プレート内に高周波数(短周期)地震動が閉じ込められて遠地まで伝播する結果、北海道ー東北ー関東の太平洋側で震度が大きくなる異常震域が生まれる。ところが、この地震では日本海側の稚内や秋田で最大震度3を観測するなど、通常の深発地震とは逆の震度分布が生じた。地震波の解析から、日本海側の大きな揺れは、周期1秒以上のやや長周期成分に富むこと、強い揺れの成因が、1)深さ660kmの上部・下部マントル境界で屈折したS波のCaustics現象、2)海面での強いsP変換波と後続するsPL波の発生、そして3)陸地での強いsS反射波の発生によることが分かった。一方、高速度のプレートを伝播するS波は、長距離の伝播過程で周囲のマントルに抜け出し弱まる、反導波効果が強かったことがスペクトル解析から分かり、また地震波伝播シミュレーションから検証された。したがって、千島海溝ー日本海溝ー小笠原海溝の巨大深発地震では、プレートの反導波効果による日本海側の長周期地震動の生成に注意が必要である。また、この地震の際には震央距離4000ー8000 kmのカザフスタンやモスクワで有感となり、高層建物からの避難騒ぎが起きた。IRIS広帯域地震計記録の解析と地震波伝播シミュレーションから、遠地の大きな揺れの原因は、地球深部のコアや地表で反射した、長周期(4ー10秒)のScS波とsS、sSS波によるものであったことが分かり、深発巨大地震では、こうした遠地での長周期地震動の影響についても考慮が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の年次計画に沿って、M9巨大地震の長周期地震動の成因に関して研究の進捗があり、また深発巨大地震の長周期地震動の生成メカニズムの検証など、当初計画以上の成果があった。
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Strategy for Future Research Activity |
2011年東北地方太平洋沖地震の長周期地震動(表面波)により西南日本での誘発地震や微動の発生、台湾、ニュージーランド、米国西海岸での微動の発生が報告されており、これら巨大地震の長周期地震動の伝播特性と地震活動に与える影響を調査する。
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Causes of Carryover |
本研究成果に関して投稿した、現在査読中の国際学術誌の出版経費および追加解析の経費に使用する。
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Research Products
(5 results)