2018 Fiscal Year Research-status Report
重力偏差テンソルを用いた実用的な断層傾斜角推定手法の研究開発
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17K01325
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
楠本 成寿 富山大学, 大学院理工学研究部(都市デザイン学), 教授 (50338761)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 重力偏差テンソル / 断層傾斜角 / 疑似深度推定手法 / 自動化 / 断層タイプの自動判定 |
Outline of Annual Research Achievements |
断層傾斜角は地震被害想定を策定する際に行われる様々な数値シミュレーションで重要なパラメータである。本研究では,重力偏差テンソルを用いた実用的な断層傾斜角推定手法の研究・開発を行っている。実用的な断層傾斜角推定手法とは,①当該断層の断層タイプ(正断層か逆断層か)を自動的に判定し,断層形態に適した方法によりその傾斜角を推定することと,②推定された断層傾斜角の深さ方向の信頼度を定量的に評価できることである。 初年度では,重力異常の水平勾配と偏差テンソルの最大固有値の組み合わせにより、断層タイプの判別ができることを示し,正断層の断層傾斜角推定には重力偏差テンソルの最大固有ベクトルが,逆断層の傾斜角推定には同テンソルの最小固有ベクトルが適切であることも示した。 本年度は,推定された断層傾斜角の深さ方向の信頼度を定量的に評価する指標や手法の開発について研究を進めている。これまでに地下構造の疑似深度と重力偏差の各6成分のパワースペクトルの間の関係を導いた。その結果,水平成層構造であるにも拘らず得られるパワースペクトルに方向依存性が現れることが判明した。このような特徴のある重力偏差データのフィルタリングについても,従来と同じ対称なウインド関数を適用することで適切なフィルタ操作が可能であることが明らかとなった。また,パワースペクトルから疑似深度推定時の任意性を取り除く手法の開発にも取り組み,実用に耐えうることが期待される手法の提案を行えるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究により,正断層と逆断層を自動判別し,適切な固有ベクトルを用いた断層傾斜角推定を可能にする手法の開発は概ね完成した。 本年度は,推定された断層傾斜角の深さ方向の信頼度を定量的に評価する指標や手法の開発で重要となるフィルタリング手法についての研究を行った。重力偏差テンソルのうち,gzz以外の成分は全て方向依存性がある。フィルタリングでは,この特性を残したフィルタ操作を行う必要があるため,重み関数の選定について多くの試行錯誤を行った。最終的には,対称なウインド関数を適用することで適切なフィルタ操作が可能であることが明らかとなった。このことは,解析的にも確かめることが出来た。また,パワースペクトルから疑似深度推定時の任意性を取り除く手法の開発にも取り組んだ。その結果,方向依存性をもつ重力偏差テンソルデータのパワースペクトルから,原因となる構造の疑似深度と影響が及ぶ周波数帯を推定できるインバージョン手法の基礎的概念の提案を行えるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,本解析手法開発の完成,すなわち3次元解析手法の確立を行う。断層タイプと傾斜角推定の評価方法についての検討を進める。また,方向依存性をもつ重力偏差テンソルデータのパワースペクトルから,原因となる構造の疑似深度と影響が及ぶ周波数帯を推定できるインバージョン手法の理論的背景を確立させ,実フィールドへの適用を多く行い,実用に耐えうる手法になるよう修正を加える。最後に,推定された断層傾斜角の深さ方向の信頼度を定量的に評価する指標や手法の開発については研究を継続して行く。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究成果は出たものの、論文作成の時間をうまく工面できなかった。そのため、英文校正費用、出版費用に残金が生じた。 (使用計画) 今年度は、昨年度の研究成果を積極的にオープンアクセスジャーナルに公表してゆく。
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Research Products
(3 results)