2017 Fiscal Year Research-status Report
Development of the technique for the assessment of fault activity using the formation age of clay minerals in fault rocks
Project/Area Number |
17K01326
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
福地 龍郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (90212183)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 活断層 / 断層ガウジ / 粘土鉱物 / ESR / 熱水反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,本研究で使用する断層ガウジ試料の採取・調整及びガウジ試料中に含まれる粘土鉱物とESR(電子スピン共鳴)信号のチェックを主に行った。郷村断層及び山田断層については,地表の断層露頭から前年度までに採取された断層ガウジ試料を最新の断層面を基準としてガウジの硬さや色などで数mm~10mm程度の部分に分離し,各々の部分のESR測定をバルク状態のまま実施した。また,各々の部分に含まれる2μm以下の粘土分を水簸法により分離し,粉末X線回折(XRD)分析により粘土鉱物の検出・同定を行った。その結果,郷村断層の郷村露頭から採取された断層ガウジ試料では,1927年北丹後地震の時に活動した最新の断層面を境にして,石英中の酸素空孔起源のE’中心と過酸化ラジカルであるperoxy中心の信号強度が急激に増大していることが確認された。また,E’中心とperoxy中心の信号強度が増大している部分では,スメクタイトのXRD強度及び結晶度も増大していることが判明した。同様の結果は,山田断層の中藤露頭から採取されたガウジ試料でも認められ,E’中心及びperoxy中心の信号強度の増大とスメクタイトのXRD強度及び結晶度の増大が対応していることが判明した。E’中心及びperoxy中心は加熱により一旦増大することが知られていることから,郷村断層及び山田断層のガウジ試料中のスメクタイトは過去の断層活動時に発生した摩擦熱により生成・増大した可能性が高い。 野島断層の分岐断層である浅野断層の断層ガウジ試料については,1995年兵庫県南部地震時に活動したことが判明している淡路市小倉地区の断層露頭から新たに採取を行った。今後,試料調整の上,ESR解析及びXRD分析を開始して行く予定である。 一方,熱水反応実験については,高温高圧反応容器の購入が完了し,予備試験を実施して熱水反応試料の封入方法についての検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
断層露頭の消滅などで断層ガウジ試料の採取については当初懸念もあったが,釜無川の増水のため試料採取ができなかった糸魚川―静岡構造線(糸静線)活断層系白州断層の代わりに,平成30年度に予定していた浅野断層(淡路市小倉露頭)の断層ガウジ試料採取を前倒しした他は,特に問題なく進み,各ガウジ試料のESR測定及びXRD分析も順調に進行した。その結果,研究前に予想していた通り,断層ガウジ中のスメクタイトが断層活動時の摩擦熱により生成・増大していることを示す結果が得られた。 一方,熱水反応実験については,熱水反応試料をステンレスパイプに封入する際に溶接が不十分のため水漏れを起こすなどの問題が発生したが,ステンレス製ニップル及びキャップ止めねじに耐熱マイカテープを使用することで,ある程度の高温まで水漏れを防止することに成功した。今後,熱水反応実験を順次進めて行くことが可能になった。 天然の断層ガウジ試料の採取及び分析は予定以上の成果を収めている一方,熱水反応実験は問題発生のため少し遅れているため,全体として,「おおむね順調に進展している」と自己評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度以降は,平成29年度に採取できなかった糸静線活断層系白州断層の断層ガウジ試料(山梨県北杜市小淵沢町国界橋付近の断層露頭)の採取を再度試みる。山田断層(虫生露頭)及び浅野断層(小倉露頭)については,採取された断層ガウジ試料のESR解析及びXRD分析を実施し,加熱により増大する石英E’中心及びperoxy中心の信号強度と粘土鉱物のXRD強度(結晶度)の相関関係を調べる。さらに,郷村断層,山田断層,浅野断層及び白州断層について,各断層ガウジ試料から検出される石英及び粘土鉱物起源の各ESR信号(Al中心,Ti中心,モンモリロナイト四重信号など)を用いて年代測定を実施し,各ガウジ試料から検出される粘土鉱物の種類やXRD強度(結晶度)との相関関係について検討する。なお,断層ガウジ試料として,研究代表者が参加していた原子力施設等防災対策等委託費事業(郷村・山田断層あるいは野島断層プロジェクトなど)で掘削採取されたボーリング掘削コア試料の一部も使用することを計画している。 一方,平成29年度までに設置完了した高温高圧反応容器を使用して,各断層岩の母岩試料を用いた熱水反応実験を実施する。熱水反応実験は加熱温度及び時間が異なる複数の条件下で行い,生成した粘土鉱物の同定と結晶度の算出をXRD分析により実施し,各粘土鉱物が生成あるいは共存する温度と時間の関係式(アレニウス式)をアレニウスプロットにより求める。また,郷村断層及び山田断層ボーリング掘削地点あるいは野島断層ボーリング掘削地点の地温勾配及び隆起速度データとアレニウス式から各粘土鉱物の生成年代を見積もる。さらに,モンモリロナイトやカオリナイト固有のESR信号が検出される場合には,これらの粘土鉱物の生成年代とESR年代値の比較検討を行う。イライトについては,熱水反応実験により見積もられる生成年代とK-Ar年代値の比較検討を行う。
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Causes of Carryover |
当初,断層ガウジ試料から検出される粘土鉱物にイライトが存在する場合には,イライトを用いたK-Ar年代測定を専門業者(蒜山地質年代研究所)に依頼することを計画し,そのための費用を計上していたが,平成29年度に分析を行ったガウジ試料からはイライトが検出されなかったため,K-Ar年代測定を依頼する必要がなくなったことが,次年度使用額が発生した理由である。 次年度使用額については,平成30年度以降に分析する断層ガウジ試料からイライトが検出された場合に,K-Ar年代測定用費用として使用する他,ESR年代測定を実施する際に必要となる年間線量率を算出するための放射性元素濃度の定量分析費用として使用することを計画している。
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Research Products
(4 results)