2018 Fiscal Year Research-status Report
浅部スロー地震域は津波波源域?1662年日向灘地震津波の地球物理学・地質学的検証
Project/Area Number |
17K01328
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山下 裕亮 京都大学, 防災研究所, 助教 (80725052)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊尾木 圭衣 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究員 (70784130)
加瀬 善洋 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 環境・地質研究本部地質研究所, 研究職員 (20707715)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 日向灘 / 津波堆積物 / 浅部スロー地震 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は,前年度の津波堆積物予備調査の結果を踏まえ,暫定的な断層モデルの検討および津波の数値シミュレーションを行った.数値シミュレーションでは既存の地球物理学データを元にプレート境界を想定した複数の矩形断層の位置や傾斜等を検討し,先行研究で示されている津波の高さおよび本研究での予備調査を大まかに説明するようなモデルについて,パラメータを試行錯誤的に変えて計算を行った.その結果,プレート境界浅部のスロー地震震源域に4-8mのすべりを与えることでおおよその傾向は説明ができる事が確認できた.一方で,パラメータの取り得る幅は大きく,これらをより詳細に検討するためのには津波浸水シミュレーションが必要であり,来年度の実施に向けて準備を進めている. 津波堆積物調査については,予備調査で海由来と考えられる砂層が確認された場所で行うより本格的な調査の為の機材の準備を進めた.今年度実施予定だった宮崎県串間市以南の調査は,調査時期等の調整が共同研究者間で付かず実施できなかったため,次年度に実施すべく調整を進めている.また,津波堆積物調査が予想以上に難航していることから,浸水シミュレーションに用いることができそうなデータとして宮崎県内の神社等における歴史資料等の情報を導入すべく新たに調査を始めた.今年度は既存の情報の整理および調査候補となる神社を選定した.来年度,実際に現地で宮司からの聞き取りや測量を実施する. 浅部スロー地震に関する調査においては,単位時間あたりのエネルギー解放量に関する新たな知見が得られた.特に,日向灘のプレート境界に沈み込んでいる九州パラオ海嶺の周辺や,過去に海嶺軸が沈み込んでいたと考えられる領域でエネルギー解放レートが小さくなる傾向が明らかとなった.このような摩擦の特徴がプレート境界の地震すべりにどのように影響するのか検討を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
津波堆積物調査が今年度実施できなかった点は来年度調査回数を増やす等でカバーする.また,津波堆積物調査が難航しモデル構築においてデータが不足することは予想されていたものの,数値計算によるパラメータの絞り込みが十分にできていない.1662年の地震当時に存在し,現存する神社における調査を新たに追加し,データを補うことにしている.
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Strategy for Future Research Activity |
津波堆積物調査については,今年度実施できなかった宮崎県串間市・鹿児島県志布志市での調査を実施すると共に,初年度に砂層が確認された地点においてハンドオーガーを用いた詳細な調査を実施する.地球物理学データの解析は,この1年で新たに追加された観測データの解析を進め,スロー地震(特に低周波微動)の活動特性(エネルギー解放量や発生密度など)や発生環境の特徴を明らかにする.浸水シミュレーションについては,準備した断層モデルのパラメータの絞り込み等を試行錯誤的に実施し,現地調査の結果等を踏まえた浸水域の議論を進める.また,不足するデータを補うため,1662年の地震時に存在した神社における歴史資料等の調査を実施する.
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Causes of Carryover |
共同研究者間の都合が合わず,津波堆積物調査が実施できなかったため旅費の多くに繰り越しが生じている.また,津波浸水シミュレーションに必要な海岸線データの整備が完了しておらず,その経費が繰り越しとなっている.次年度が最終年度であるが,1年の期間延長を検討しており,残り2年間において経費を執行する.
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Research Products
(12 results)